吉上亮 (著), サイコパス製作委員会 (著)
西暦2080年、新人刑事の征陸智己は、匿名捜査対策室への配属され、親爺と呼ばれる八尋のチームの一員となる。
このチームはコールドケースを追って捜査をしているが、そこにはシビュラシステムにより国の県曲を握ろうとしている厚生省との激しい対立があった。
だが、新人征陸の活躍により、ケース39と呼ばれるコールドケースを解決する。
その後、様々な捜査を続けていく中で、征陸は自身の父が死ぬ事になったノナタワー落成式襲撃事件の主犯が潜伏している場所を突き止めて、犯人と対面を果たす。
しかしその犯人はベッドに呼吸器を着けて横たわっている老人であった。
死期が近い老人の姿を目の当たりにし、征陸は憎しみも何も沸いてこなかった。
そこに突然厚生省による武装集団が襲撃し、老人は殺害されてしまう。
この事件をきっかけに八尋は辞職してしまうのだった。
それから数年、日本は厚生省のシビュラシステムが体制を支配していた。
個人の魂を数値化する技術により判断されるサイコパス。
その数値によって社会にとって脅威である者は潜在犯として隔離され、その数値が著しく高い場合は即処刑となる治安維持、犯罪係数が創造された。
それに伴い、警察組織も撤廃され、新たに公安局が設置される。
そこの刑事課で征陸は治安業務にあたっていた2093年の事、久しぶりに大きい事件を捜査することになる。
チームのメンバーとして昔からのメンバーに新人を加え、出向いた先に待っていたのは、なんと八尋であったのだ。
そしてそこは凄絶な現場へと化していくのであった...
この作品はアニメ・サイコパスの前日譚といえるスピンオフの第1弾である。
アニメにて常守朱監視官の下、執行官として活躍する征陸智己の若き日々を、そして犯罪係数が100を越え、潜在犯となるまでを描いた作品である。
まだ、シビュラシステムが浸透する前に刑事として事件に当たっていた征陸であるが、厚生省による社会体制の変化に翻弄されていく。
その中で何が正しいのかを追求し、システムに振り回される事なく行動するが、それは全て徒労に終わり苦悩していく。
そして親爺と仰いだ八尋が社会の不完全性を証明するために取った行動...
一見、何もかも不自由なく、犯罪も極めて少なくなった近未来の世界。
だがそれは偽りのユートピアではないだろうか。
機会により判定され、すべてが決まる世界。例え平和であろうと、果たしてそこに本当の幸せはあるのだろうか。
人口知能がどんどん進化していく今、将来的にこのような世界が訪れたとしても不思議ではない。
人のあり方を考えさせられる作品だと思う。同時にアニメ同様、とても面白い作品である。