自殺教唆ゲーム

恋に至る病


恋に至る病

斜線堂 有紀(著)

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斜線堂 有紀(著)

「世界が君を赦さなくても、僕だけは君の味方だから」

全てが変わったのは、”私のヒーローになってくれる?”というあの日の言葉だった。

転校が多い小学5年生の宮嶺望は新しい学校に転校してきた。

自己紹介の挨拶で浮きそうになった彼を助けたのは寄河景という少女であり、景はカリスマ的存在で誰からも好かれる、クラスの中心人物であった。

ある日、校外学習にて事件は起きる。

とあるはずみで怪我をしてしまった景を宮嶺が助けたのがきっかけだった。

景は彼に私のヒーローになってくれる?と尋ねる。

宮嶺はその時に、何が起きても景を守る味方でいると約束する。

だがその事件を境に、宮嶺はいじめられるようになる。

景に好感を抱いていた根津原という少年によるいじめは日に日にエスカレートしていく。

凄惨ないじめ、激しい暴力により宮嶺は心身ともに削られていく。

その様子は蝶図鑑と題してネットに日々更新されていた。

だがある日、根津原が謎の自殺で死んでしまう。

それを機にいじめは止まるのであった。

そして時は流れ、中学生になって宮嶺は景に問う。

根津原を殺したのかと。景の答えは肯定だった。

二人だけの秘密を持ったまま、高校生となり、やがて二人は付き合い始める。

その頃世間では青い蝶(ブルーモルフォ)という自殺教唆ゲームが流行していた。

そのゲームのマスターは景であり、次々と自殺者を出していく。

守ると誓った少女は化け物になってしまったのか...

それでも宮嶺は景の見方であり続けるのだった。

これはすごい衝撃的な作品である。

タイトルからすると恋愛が中心のストーリーかと思いきや、全くの予想外だった。

ある意味では1つの愛の形を描いているが、それはどちら側からしてもゆがんだものだろう。

最後にすべての事が繋がったときは旋律を覚えるくらいの衝撃だった。

いじめ、自殺と重いテーマでネットが与えるバタフライ効果ともいえる影響力やさまざまな問題を詰め込んだ作品だ。

行くとも行かぬとも、待っているのは地獄である。

これは一読すべき作品であると思う。

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