瞬間移動能力を身に着けたら・・・

ジャンパー


ジャンパー

スティーヴン・グールド (著), 公手 成幸 (翻訳)

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スティーヴン・グールド 著

公手 成幸 (翻訳)

デイヴィッドは読書が好きな高校生である。

父と二人暮らしで、 母はデイビットが12歳の時に、 父の暴力に耐えかねて家を出て行ってしまった。

デイビットが自身の持つ不思議な能力に気付いたのは、 父から暴力を受けていた時であった。

暴力から逃れようとすると気付いたときには馴染み深い図書館へと移動していたのである。

デイヴィッドはテレポーテーションの能力の持ち主だったのだ。

自分の能力を知ったデイビットは父の暴力から逃げるため、 家を出て ニューヨークへと向かう。

だがニューヨークで生活をしていくには、 高校生のデイビットは何も持たなすぎであった。

お金もなければ、 身分証すらないから働くこともできない。

そこで彼は 自分のジャンプ能力を使い、 銀行から100万ドルを盗むことに成功する。

そのお金で必要な物を全て揃え、 ニューヨークでの生活にも慣れた頃、 デイビットはミュージカルでミリーという女性と出会い恋に落ちる。

ミリーとの距離を縮め二人は恋人となる一方で、 デイビットは 12歳の時に別れた母を探し求める。

母との再会を果たしたデイビットであったが、 幸せな時は続かなかった。

しばらくして母がハイジャック事件に巻き込まれて死んでしまうのであった。

母の訃報を知ったデイビットは、 自身のジャンプの能力を駆使し、 ハイジャック犯をとらえるために世界中を飛び回るのである。

しかしその一方で デイビットの特殊能力を知った NSA と呼ばれる組織は、 デイビットを捕らえるために動き出す。

追いつ追われつ のジャンパー デイヴィッドの戦いと活躍に目が離せないだろう。

この小説は映画ジャンパーの原作であるが 映画版と原作とではかなり話の内容や設定が異なっている。

まず原作では知らない場所( 行ったこと、 見たことがない場所) にはジャンプができない。

これはこの作品が描かれたのが1992年。

映画化されたのは2008年であり 冬至とは時代背景が違うのは当然として、 ネットの普及や衛星による地図の発達などがあるからであろう。

映画版ではどこでもジャンプできるようになっている。

またストーリーもだいぶ違う。

基本的な部分は 踏襲しつつも別の物語かのようである。

とはいえ映画に合わせて書かれた「 ジャンパーグリフィンの物語」 によって映画版についての補完がされている。

誰もが一度くらい考えたことがあるであろうテレポーテーションという能力の願望 ただの物語にしているわけではなく、ジャンプ能力というアイデアから描かれる。

ストーリー展開は SF 作品として読んでいて普通に面白い。

映画と小説合わせてみるのがお勧めである。

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