スティーヴン・グールド著 公手 成幸訳
この物語は映画版ジャンパーに登場するもう一人のジャンパー、グリフィンを描いたものである。
グリフィンが初めてジャンプ(テレポーテーション)をしたのは5歳の時であった。
イギリス生まれのグリフィンは、幼い頃からジャンプの能力を隠すために、一家で各地を転々と渡り住んでいた。
その後、グリフィン一家はアメリカへと移住するのだが、9歳の時に謎の組織に居場所を発見されてしまう。
通っていた空手教室の少年に絡まれて、グリフィンはついジャンプをしてしまったのである。
このジャンプがグリフィンの運命を変えることになる。
謎の組織はジャンプを感知できるのであった。
ある晩のこと、突如として家に現れた謎の組織により、グリフィンを守ろうとして両親は殺されてしまう。
グリフィン自身も殺されかけたが、命からがらジャンプをして逃げ延びる。
逃げた先で出会ったのがサムとコンスエロの二人であった。
大怪我をして倒れていたグリフィンは彼らに助けられ、行く場所もなかったグリフィンは親切な二人を、次第に家族のように慕っていく。
そしてコンスエロの姪のアレハンドラの元、メキシコで2年間暮らすことになる。
だが平穏な日々は続かない。 またしても居場所がバレてしまったグリフィンは、サムとコンスエロ、アレハンドラの安全を守るために、彼らの元から去るのを余儀なくされる。
その後、一人で生きていくために隠れ家を見つけ、グリフィンは少しずつ大人へと成長していく。
グリフィンの人生はいつも失うことの連続であった。
イギリスでできた友人にも、何も伝えることすらできずに、自ら去らざるを得なかった。
だがそれは、すべては安全のため自分の大切な人に、被害が及ばないようにするためであった。
だがグリフィンをまたしても悲劇が襲う。
大切な存在であったサムとコンスエロが、謎の組織によって殺されてしまうのであった。 グリフィンにとってこれが大きな転機となる。
残された大切な人、アレハンドラや恋人を守るために、謎の組織から逃げ続けるのではなく、戦い立ち向かうことを決意するのだった。
壮絶な人生を送る少年、ジャンパーグリフィンの戦いの物語である。
今作品は映画を見てから読むのがいいだろう。
映画の中でのグリフィンのセリフや行動にも頷ける。
超能力者という特別な力を持ち、苦難ばかりの少年が成長していく姿はとても共感できる。
また追う側の組織としても、超能力で常軌を逸する能力に対し、恐れそれを抑えようとするのもわかる。
使い方によっては、どんな兵器よりも恐ろしい能力であることに違いないのだ。
映画の公開とともに前日譚として書かれた今作品、映画とは関係なく普通に面白い作品だ。