宮内 悠介著
灰原由宇、彼女は異色の棋士である。
それは彼女が四肢を失った異端の棋士だからだ。
ある対局で彼女は呟いた。
星が痛いと。
その意味...
由宇は以後版を肌で感じることができるのである。
それが彼女の強さであった。
若き天才女流棋士と呼ばれる由宇。
だが、そこに至るまでの過去は普通では考えられないような悍ましいものであった。
由宇は自分で碁を打てない。
そんな彼女のパートナーとなったのは、現役棋士である相田という男性だった。
2人は共に暮らすようになり、次第に由宇は時の人となっていく。
ジャーナリストの「わたし」が異色棋士の由宇を追った、表題作「盤上の夜」を始め、チェッカーというゲームにおいてコンピューターとの戦いを描く「人間の王」。
麻雀をテーマにした「清められた卓」。
はるか遠い過去、古代チェスであるチャトランガでゲームの誕生を描いた「象を飛ばした王子」。
将棋をテーマに人間の腐敗したような感情を描いた「千年の虚空」。
そして再び灰原由宇と相田が登場する「原爆の局」の6編からなる短編集である。
この作品は「わたし」というジャーナリストを語り手として紡がれている。
盤上の夜から通して原爆の局にてすべてが結実するように描かれている。
全てはテーブルゲームをテーマにしており、ルールがわからないと、作中の対局シーン等理解できない部分もあるかもしれない。
だがそれを抜きにしても、作品の中々に重い過去やドロドロとした設定に物語にのめりこんでしまう。
解説で沖方丁さんが語っている通りに、人生とゲーム、始まりと終わりや再生といった内容が描く作品にてちりばめられている。
日本SF対象受賞作品であるこの作品、一見の価値ありだろう。