音乃木坂図書室 司書
「さて、次が私たちにとって何より重要な議題であります。 μ'sとしての活動は先月末をもって終了し、3人の先輩たちは卒業しました。
そこで音乃木坂に残った私たち6人は、今後どのように活動すべきでしょうか」花陽は全員に問い掛ける。
この問題については各々が考えており、先陣を切って穂乃果が意見を述べる。
「例えばだけど、学年ごとにユニット組んで活動するのはどうかな? 私と海未ちゃんとことりちゃんで3年生ユニット、真姫ちゃんと凛ちゃんと花陽ちゃんの2年生ユニット。
これなら私たち3年生が卒業した後でもそのまま2年生ユニットのメンバーで活動もできるし、いいかなって思ったんだ」
穂乃果の意見に花陽以外、全員が頷く。
そこに凛が付け加えるように言う。
「だったら3人でユニット組むなら、先のことは考えずに学年関係なしにメンバーをシャッフルしても面白いんじゃないかにゃ」
花陽は表情を微動だにせず意見に聞き入る。
「そうだね、だったらもう全部リセットしちゃってもいいんじゃない?新しく入ってくる一年生も含めて考えるとか」 ことりが言った。
それぞれ意見を出し合うも、決まりそうな気配はない。
「うーん...これを決めるのは難儀ですね...」 海未の言葉に花陽以外はうーんと俯いていた。
分かっていたが、 μ's なきその後を決めるのは容易ではなかった。
だが一人苦虫を噛み潰したかのような表情の花陽が、少しきつい口調で言葉を発した。
「ねえ、みんなはそれでいいの?」 突然の口調の変化に、他の四人は少々狼狽気味に花陽へと振り向く。
花陽は鋭い口調で続ける。
「別々のユニットでって...作曲はどうするつもり?」
花陽の言葉に皆が”あっ”と声を揃える。 皆気づいてなかった...というより、そこまで深く考えていなかったのだ。
例えば衣装。 これはμ'sにおいてはことりが全てのデザインを担当し、ことりが中心となり制作していた。
衣装においては、それぞれ違うユニットになったとしても、苦労はするが何とかなるであろう。
しかし作曲となると話は別だ。
μ'sの中で作曲ができるのは真姫だけである。
これは努力してすぐになんとかできる問題ではない。
当然ながら音楽理論の知識や培ってきた経験、そして才能が必要となる。
また真姫はピアノによる作曲に加え、ギター、ベース、ドラムといった楽器から他の楽器やシンセサイザー等を含めた打ち込みによる曲作りをしている。
つまり楽曲として完璧に仕上げているのだ。 それが真姫である。そんな真姫の代わりを務められる者などいない。
真姫がいたからこそのμ'sであり。A-RISEとともにスクールアイドルとして群を抜いていたのは、その楽曲の完成度の高さがあったからこそであった。
真姫がいなかったらμ'sは成り立たなかった。 それほどμ'sにおいて真姫の存在というものは大きかったのである。
「今私たちの中で作曲ができるのは真姫ちゃんだけだよ。 1年生でも作曲できる子は入ってくるだろうけど、一人であそこまで完璧に楽曲として仕上げられるのは真姫ちゃんだけだと思う。
μ'sとして活動しないなら他のユニットとか別々に活動してみたいって気持ちも少しは分かるよ。
でも...私は残ったこの6人で新しいユニットとして活動したい。真姫ちゃんあっての私たちだし、私にはこの6人が別々に活動するなんて考えられない!」
花陽は真姫に対する思い、そしてμ'sの残った6人のメンバーに対しての思いを全てぶつけるかのように語る。
「この6人でなら言葉に出さずとも、意思の疎通ができる。 お互いを感覚的なもので感じ取れる...それになにより私はこのメンバーが大好きなの... だから私はこの6人で活動したい! 元μ'sの6人ではなく新しい6人として!」
どうして気づかなかったのだろう...いや、気づかなかったわけではなく、なぜだか皆勘違いをしていた...μ'sがもうなくなって、それに伴い自然とこのメンバーで活動するという考えがなくなってしまっていた。
でも答えは一番簡単だった。 考えるまでもないような当たり前のものであった。
残った6人で活動すればいいだけのこと。 それだけだった。
花陽の熱い想いにより皆それに気付いたのであった。
「おそらく近いうちにラブライブ第3回大会の詳細が発表されるはずです。 確実に今回の決勝大会はアキバドームで開催されるはずです。
だから...もう一度、今度は私たち6人でアキバドームを目指しませんか!」
大きな声で全てを出し切ったかのように花陽はいった。
その顔つきはとても良い表情をしており、一人ずつメンバーの顔を見回す。 全員がとても良い表情をしている。
そんな後輩の姿を見て、絵里とにこも自然と笑みを浮かべていた。
「うん、やろう!この6人でやろうよ!余計なこととか色々考えちゃったけど、やっぱりこの6人だよ。 またみんなで...6人でラブライブ優勝を目指そう!」
力強くそう言って立ち上がったのは穂乃果だった。
穂乃果の言葉に続き、皆が笑顔で立ち上がる。
そんな穂乃果の言葉を聞いて、絵里は呟くようににこに言う。
「穂乃果の言葉の力って不思議よね...なぜだかわからないけど、穂乃果が言うと、どんなことでも不思議と何でもできるような気になるのよね」
「そうね。あの子の魅力は知らないうちにみんなを一つにして引っ張ってくれる姿とかなのよね。本当に不思議な子よね...」
絵里の言葉ににこも思いは同じであった。 二人にとっても穂乃果の存在感というものは特別なのであろう。
それもそうだろう穂乃果がいなかったらこの二人がこうして仲良くここにいることもなかったのだから...
「うんみんなでやろうよ。私もこの6人がいい。うーん...この6人じゃなきゃ嫌だよ。 またみんなでラブライブ出場しようよ。衣装は任せて。μ'sの時以上に可愛い衣装をデザインするからね」
ことりの言葉に続くように海未も言う。
「そうですね。みんなでやりましょう!この6人でなら何でもできる気がします。私も今まで以上に良い詞を書きますよ!」
最後に凛が体中で表現するかのように躍びまわる。
「やるにゃー、6人で再スタートにゃ!みんなでラブライブ出るにゃー、μ'sに続いて優勝するぞー!」
皆の言葉に花陽は満面の笑みを浮かべる。
花陽だけではない。穂乃果も海未もことりも凛も、そして OG の二人、絵里とにこも全員が笑顔である。
これで全員の想いは決まった。 事前に皆の意見に賛成すると言っていたが、花陽は一応真姫に確認のメールを送る。
すぐに返信があり、返事はもちろんOKよであった。
こうして6人は元μ'sとしてではなく、新しい6人として再出発することを決めたのであった。
「ようし、これで決まりだね。 私たちならできる。今日からまたみんなでラブライブ優勝を目指して頑張ろう!」
穂乃果の言葉に一同揃って”おーっ”という声をあげた。
花陽も部長として安堵の表情を浮かべる。
その光景を嬉しそうに見守る絵里とにこの二人であった。
「頼もしい後輩ね、絵里」
「ええ、そうね、これなら安心ね。でも...」
「ん!?でも何よ?」
「でも...なんだか少し羨ましいなって...」
「フフッ...それは言わない約束よ絵里」
「うん、分かってる...頑張ってねみんな」
「頑張りなさいよあんた達。応援してるわよ」 先輩から見ても頼もしくもあり、そして羨ましくも思えてしまう6人の姿だった。
結局最終的にはこの6人で活動することになったであろう。
だが6人で考え全員で決めたことに大きな意味があるのだ。
再び強い絆で結ばれたのであったのだから... 再び6人で活動することを決めた元μ'sの6人。
今日から新しい6人としてのスタートである。
EP-003へ続く