音乃木坂図書室 司書
ー7月下旬ー
暑い日差しが照りつけて、これからいよいよ夏本番と言う7月の中頃のこと。
夏休みももう間近と言う時期であるが、この日もいつもと変わることなく、放課後にスクールアイドル部部室にはμ‘sicforeverの6人が集まっていた。
期末テストも終わり、授業はもう午前中のみとなっており、一年生のユニットは夏の暑さに負けることなく練習に励んでいる。
そんな中で先輩たち6人はなぜ部室にこもっているかと言うと…今月はアキバドームで開催される第3回ラブライブ決勝大会の抽選日であった。
音乃木坂からは1年生ユニットのRay-OGが大健闘したものの、惜しくもあと1歩届かず、決勝大会には進出できなかった。
だが、μ‘sとしてゲスト出演することになっている2・3年生の6人はこの日の練習を休みにして、生配信される抽選会をみんなで見ることにしたのである。
「暑い…まじ暑い…」そういうのは穂乃果である。
スクールアイドル部にはクーラーがないので、それこそ夏になると、とんでもない暑さになる。
梅雨が明けると、東京は連日のように30度越えの日が続き、35度を超える猛暑日になることもザラである。
スクールアイドル部には部費で購入した扇風機と冷風機があるが、それがあっても暑いことに変わりなかった。
「ちょっと穂乃果、扇風機占領しないでよ。!暑いでしょう!」
うちわであおぎながらそう言ったのは真姫である。
穂乃果は扇風機を独占するように抱え込んでいたのだ。
「だって暑いんだもん。ねー真姫ちゃん、生徒会長の権力で部室にエアコンつけてよ。暑くて死んじゃうよ…」
「そうね…ってそんなの無理に決まってるじゃない!元生徒会長ならわかるでしょ!馬鹿なこと言ってないで扇風機の前からどきなさいよ!」
「…ていうか練習休みにしたんだから、物質じゃなくて良くない?」
「知らないわよ、花陽に言ってよ!」
これは昨年も見られた光景である。皆暑いのは一緒だが、人より多く食べる穂乃果は代謝が良いのか、かなりの暑がりだった。
真姫は花陽に振るが、花陽は我関せずと言った感じでおとなしい。
いや…おとなしいというか既に切り替わっている。
「いよいよですね…ドキドキします…」 そうアイドルモードに。
すでに抽選会の事しか頭になかったのである。
そして時刻は午後2時になり、ラブライブオフィシャルホームページにて抽選会の生配信がスタートした。
その瞬間、花陽のテンションは一気に爆上がりした。
まるでただの熱狂的ファンかのように。
いや実際そうである。「待ってました!ヤッホーおお!」花陽の声に全員が反応しパソコンの画面を見つめる。
今大会の抽選会は東京都内にて行われており、各地区を勝ち抜いたユニットの代表者が抽選のため集まっていた。
ただし、スポーツの大会と違い、対戦相手を決めるわけではなく、出演順を決めるだけなので、遠方のために来られないユニットに関してはラブライブ運営が代理で抽選を引くと言うことになっている。
「抽選会に先立ち、今大会のスペシャルゲストを発表します。まずは第一回のラブライブチャンピオンであり、現在プロのアイドルとして活躍するA– RISEの皆さんです!」
抽選会の司会進行役がそう告げると、A–RISEの3人がステージへと現れた。
「キャー!きましたー。A– RISEー!」
それを見ていた花陽が大興奮でモニター越しに叫んでいた。
その姿は完全にただのファンである…
花陽の後方から見ている子らも声を上げているが、花陽が画面に食い入るように見ているため見づらいことほかならなかった。
「こんにちは、A– RISEのツバサです。今回はゲストとして呼んでいただき、大変光栄です。初のドーム大会と言うこともあり、スクールアイドルの皆さんは緊張もあるかと思います。でもまずは私たちと一緒にラブライブアキバドームを楽しみましょう!」
「同じくA– RISEの統堂英玲奈です。私たちも微力ながらラブライブに貢献できたことを誇りに思い、今回のゲスト出演をさせていただくことになりました。私たちに負けない位の熱いライブスクールアイドルの皆に期待しています。」
A– RISEを代表してツバサと英玲奈が一言を言うと、A– RISEのファンである花陽はどこから取り出したのかわからないが、タオルマフラーを手にノリノリであった。
もう既に何回もA– RISEと共演しているにもかかわらず、この熱狂ぶり…若干うっとうしくすら感じる他のメンバー5人であった。
「A– RISEの皆さんありがとうございました。
A– RISEの皆さんにはオープニングゲストとしてライブを行っていただくことになっています。A– RISEの熱いライブ楽しみですね。
続きまして二組目のゲストの発表です。μ‘sの皆さんです!」
司会がそう告げるとまさかの出来事が起きる。
A– RISEはそのままステージの脇にある椅子に腰を下ろしたが、A– RISEと入れ替わるようにステージへと現れたのは…
「えっ…えっ?えええーっ!?!?、なんでどうしてにこちゃんに絵里ちゃんに希ちゃん...今日、出ちゃうの!?」
花陽は驚きのあまり大声を上げる。
他の子にも同様にだ。
誰1人として今日この3人がラブライブ抽選会に参加すると言うことを聞いていなかった。
同じμ‘sのメンバーにとって寝耳に水といったところである。
抽選会場はA– RISEに続きμ‘sメンバーの登場に大きな歓声が上がる。
「皆さんこんにちは。μ‘sの綾瀬絵里です。
今回はゲストとして呼んでいただきありがとうございます。A– RISEとともに少しでも大会を盛り上げることができればと思っております。
私もまた1ファンとしてスクールアイドルの皆さんのライブを心から楽しみにしています」
「こんにちは、μ‘sの矢沢にこです。
まずは決勝大会に進出したスクールアイドルの皆さんおめでとうございます。私も皆さんの熱いライブを心から楽しみにしております。
またこのたびは皆さんに多くの声をいただいて、今一度μ‘sとしてゲスト出演させていただくことになり感謝の気持ちでいっぱいです。
スクールアイドルの皆さんも私たちと一緒にライブを楽しみましょう!」
μ‘sの代表として絵里とにこが挨拶をした。
その様子をなぜか息を止めて見つめていた花陽は2人の挨拶が終わるとともに大きく息を吹き返したかのように荒い呼吸をする。
「ハァ…ハァ…ハァ…緊張した…ハァ…苦しい......」
「なんで花陽が緊張してるのよまったく… というか息とめる意味がわからないし」
と真姫が突っ込むものの、当の花陽は何のことやら、PCモニターに見入ったままで聞き耳持たずであった。
「μ‘sの皆さんありがとうございました。μ‘sの皆さんにはエンディングゲストとしてライブを行っていただくことになっています。
A– RISEとμ‘sのライブはまさにラブライブの歴史とも言えるでしょう。みんなで最高の大会にしましょう!」
司会がそう言うと、3人はA– RISEとともにステージ脇の椅子へ腰を下ろした。
これから抽選会となるが、今日会場に来ているのは関東近郊のスクールアイドルが中心で多くのスクールアイドルは代理抽選となる。
そのため抽選会を盛り上げるために、今日ゲストで来ているA– RISEとμ‘sが遠方で抽選会に来れないスクールアイドルの代理で抽選をすることになっていたのだ。
抽選会の段階から盛り上げようとするラブライブ運営のこの大会にかける本気度と言うものが伝わってくる。
「びっくりした…にこちゃんが真面目に話してたにゃ…」
「そうねそれもびっくりしたけれど、それよりも…」凛の言葉に真姫が言った。
確かにいつものにこからしたら、考えられない位真剣に話していただろう。
真姫はそのまま言葉を続ける。
「なんであの3人今日参加することを黙ってるのよ!」
そうやはり6人にとっては3人が強抽選会に参加していることが何よりの驚きであったのである。
続く