その後のラブライブ

ラブライブの続きを勝手に考えてみる~EP-017僕らは今の中で④(126)


ラブライブの続きを勝手に考えてみる~EP-017僕らは今の中で④(126)

音乃木坂図書室 司書

ラブライブの続きを勝手に考えてみる~EP-017僕らは今の中で④(126)
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ラブライブ! 2nd Season

ラブライブ! 2nd Season Blu-Rayより

そして大会は終了した。

前日の団体戦、今日の個人戦を共に終えて、現在表彰式の最中である。

会場にアナウンスが響く。

“女子個人の部準優勝、音乃木坂学院、園田海“

前年に続き決勝まで進出した海未であったが、決勝ではわずかの差で敗れてしまった。

惜しくも前年同様優勝と全国大会出場はしてしまったものの、準優勝という成績も十分に立派なものである。

スクールアイドルとして、μ‘sとして多忙を極める中でも一切手を抜くことなく、弓道の練習にも精進してきた海未である。

その姿を穂乃果とことりはよく知っている。

他のメンバーも2人に比べれば詳しくはないが、目にしてきた。

そんな海未を皆が知っているからこそ、自然と心から大きな拍手を送る8人であった。

そして大会の予定も全て終了したところで穂乃果が言った。

「さてと…表彰式も終わったし、みんなで海未ちゃんに会いに行こうか」

「うん、そうだね。そうしよう」ことりが言った。

そして8人は試合後の海の下へと向かった。

基本的に選手も一般の人も出入り口は同じなので、8人は1階に降りて、会場入り口のロビーへと向かう。

そこには音乃木坂の弓道部の生徒とともに、荷物を手にし、帰り自宅をしている海未の姿があった。

海未8人は背後から近づき、穂乃果とことりが声をかける。

「海未ちゃんお疲れ様」その声に反応し、海未は8人の方へ振り返った。

「穂乃果、ことり…それにみんなも…」笑顔を見せる海未。

大会の時は緊張感で張り詰めた表情であったが、大会を終えていつもの穏やかな海へと戻っていた。

だがやはり少し疲れもあるのだろう。

その声はそう感じられるものであった。

そんな海未に対し凛が飛びつくように抱きついていた。

「海ちゃんにおめでとうすごいかっこよかったよ。海未ちゃんが弓道やってる姿初めて見たけど感動したにゃ」

「凛、海未は試合後で疲れてるんだからそんなにベタベタしないの。今日はね、みんなで海未の勇姿を見に来たんだ。すごかったよ海未」

そう言ったのはにこである。さらに絵里も言う。

「惜しかったわね海未。あと1歩だったけど、それでもにも十分にすごいよ。おめでとう海未」

他のみんなも声を揃えて海未の健闘をたたえる。見ながらの祝福の言葉に海未は笑顔で応じる。「凛、にこ、絵里…みんなありがとうございます」

そして海未は全員の顔を見回して、クスっと笑い言葉を続ける。

「でも大変でしたね。こんな場所でもμ‘sってばれてしまって。みんな囲まれてサインや写真を求められていましたもんね」

「えっ、私たちのことを気づいてたの海未?」 そう言ったのは真姫だ。

同様に花陽も言う。「全くそんな素振りなかったし、海未ちゃんがすごい集中してるのがわかったから、気づかれないと思った。さすが海未ちゃん、視野が広いや」

「騒がれる前から気づいていましたよ。私がμ‘sの8人に気付かないわけないじゃないですか」

そう言って海未は優しい笑みを浮かべる。

「それやのにあの集中力はさすがやね海未ちゃん」

「そんなことないですよ希。内心ではみんなが来てくれていることに気づいた時は嬉しくて叫びたい位でしたから」

海未は8人の姿に気づいていた。

いつも通り言い争うにこと真姫の姿やみんなの姿を目にして、自分もその場に飛び込みたいと思った位であった。

それでも大事な試合の直前だ。

冷静に集中し大会に挑んだ海未だった。

「さてと…、それでは私は弓道部の皆と一旦学校に戻りますので…今日は応援に来てくれてありがとうございました。明日また、μ‘sの練習で会いましょう」

海未は荷物を手に取り、弓道部員の皆の元へ戻り、最後の自由最後にμ‘sの8人に“お先に失礼します“と丁寧な口調で言うと、一足先に帰路へ着いた。

海未の背を見送ったしばらく後に、8人も会場を後にした。

1時間後、アキバへと戻って8人はそのまま解散する。

にこはバイトがあり、真姫は個人的な用事があるとのことで、どこに寄ることもなく珍しくすぐ解散となったが、穂乃果とことりの2人は家に帰らず音乃木坂へと向かっていた。

学校に着いた2人は、中へは入らずに校門の脇へと立っていた。

時折、穂乃果は校門から中を覗いたりしている。

どうやら2人は学校に戻った海未が出てくるのを待っているらしい。

待つこと20分弱。後者から校門へと続く通路、荷物を背に歩いてくる海未の姿を2人はとらえた。

その姿はどことなく寂しそうである。

やはり今日の大会をもって弓道部は最後というのがあるからだろう。

海未が校門に差し掛かり、横の通用扉をくぐった時、横から大きな声で穂乃果が声をかけた。

「海未ちゃん!」」「うわっ…!?ほ歩…穂乃果…!それにことりも…」

大声を上げて驚く海未。

その表情とポーズはまるでお笑いコントかのような仕草である。

まさか校門を出たところでいきなり声をかけられるとは、全く予想していなかったのだろう。

「びっくりしたじゃないですか…心臓が止まるかと思いましたよ…それより穂乃果とことりはこんなところで何してるのですか?」

すると、ことりが海未の腕にくっついて言う。

「なんだかねー、穂乃果ちゃんと一緒に海未ちゃんに会いたくなっちゃって。音乃木坂に来たら会えるかなぁと思って」

「そうなのですか。でもさっき会場でもお会いしましたし、それに毎日学校でも会ってるじゃないですか」

「うん、そうなんだけどねそうなんだけどさぁ。海未ちゃんちょっと3人で寄り道して行かない?」

穂乃果がそう言うと、海未はうなずいた。

そして3人はそのまま神田明神へと向かった。

時刻は19時近くになり、まもなくひもくれ、空が朱色から次第に暗い闇に包まれ始めていた。

この時間だ。神田明神に参拝客はいない。

静かな境内には、初夏特有の夕暮れの心地よい空気と、微かに聞こえてくる虫の鳴き声以外はなかった。

ベンチに座り話をする3人。

「いつもライブ前はここでお祈りしてたよね。海未ちゃんの試合前も必勝祈願で一緒に来ればよかったなぁ」

「ふふふ…そうですね。穂乃果の言う通りだったかもしれませんね。忙しくてすっかり失念していました」

「今日ね海未ちゃんが弓道やる姿を見て、みんな感動してたよ。私とことりちゃん以外は見るの初めてだし、みんながすごいって言ってたよ」

「ありがとうございます穂乃果…」「でもね…」と言って一旦言葉を止めたのはことりだ。

海未の顔を見つめことりは言う。

「でもね大会の後の海未ちゃんを見てすぐにわかったよ」

「…何がですかことり…?」 その言葉に海未は一瞬戸惑う表情を見せる。

「海未ちゃん、笑ってたけど、悔しいの耐えていたのがすぐにわかった…」

さらに穂乃果が受け継ぐように言う。

「みんなに笑顔で答えてたけど、海未ちゃんが…私には海未ちゃんの顔が泣いているように見えたんだ…」

すると、2人の言葉を黙って聞いていた海未は、何かの線が切れたかのようにみるみるうちに表情が崩れていく。

そして大声で泣き出し、大粒の涙を流す海未…

「うぅっ…本当は勝ちたかったです…悔しくて悔しくて…ううぅ……うわーん…」 

何度も悔しいと言う言葉を口にし、泣き続ける海未。

海未にとって最後の大会であり、かける思いも強かったのだろう。

昨年は届かなかった優勝。

今年こそと言う思いだったに違いない。

それに自信もあったはず。

それだけスクールアイドルと並行して、見えないところで努力してきたのだ。

だが勝敗は時の運とでも言うべきか…

ほとんど差はなかった。

しかしそのわずかの差で勝敗は決したのである。

穂乃果とことりはそんな海未を支えるようにして寄り添い続けていた。

園田海未、音乃木坂学院・弓道部部長、都大会準優勝。

本日をもって弓道部引退。

続く

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