音乃木坂図書室 司書
正面ステージの特大スクリーンには、ラブライブ決勝大会中継中と表示されている。
会場には軽やかなリズムのSOUNDが流れていたが、その音楽が止むのと同時にスクリーンの文字は消えてμ‘sの映像が流れ始める。
正面ステージの特大スクリーンには、ラブライブ決勝大会中継中と表示されている会場には軽やかなリズムのSOUNDが流れていたが、その音楽が止むのと同時にスクリーンの文字は消えてμ‘sの映像が流れ始める。
スクールアイドルのμ‘sを振り返るかのように編集された映像に、会場からは大歓声が上がる。
それとともに会場は一気にμ‘sメンバーのイメージカラーであるサイリウムに包まれる。
オレンジ、白、青、緑、黄色、赤、ピンク、水色、紫…9色の鮮やかな光が会場で揺れ動く。
そしてμ‘sの映像が終わると、鳴り響くような効果音と共にスクリーンにはμ‘sの文字が、 さらにSecond LoveLive Winner の文字が浮かび、μ‘s FinalLive Music Start ! と映し出された。
一瞬の静寂。
そして次の瞬間、ピアノの美しい旋律が会場に鳴り響くとともに、アリーナ席中央に設けられた特設ステージの花弁を模した舞台が開く。
その中には、それぞれの花弁にμ‘sの9人が立っていた。
9人の女神の花が美しく咲き、μ‘sのファイナルライブがスタートした。
[僕たちは1つの光/詩]
真姫がμ‘sとして、μ‘sのためにやりたいと言った曲。
この曲をやるまでμ‘sは終わらないと真姫は言った。
それだけ真姫はこの曲に自分の思いを込めていた。
作詞までも真姫自ら行って作った曲。
歌詞にはμ‘sに対する思い、μ‘sのメンバーに対する思いを込めていた。
歌詞の所々にメンバーの名前を散りばめるなど、それだけ真姫はこの曲を大事にしていた。
μ'sの最後を飾るのにふさわしい、美しい曲である。
曲の途中、間奏のメロディーは少し切なげで、哀愁漂う雰囲気であり、これまでのμ‘sのすべての集大成と言えるこの曲で、会場では自然と涙を流している人もいる位、心を揺らがせる素晴らしい曲だった。
最初で、そして最後となる僕たちは1つの光を披露したμ‘s。
会場は大歓声と大きな拍手に包まれていた。
特設ステージ、花弁の上でμ‘sの9人は会場に向けて手を振って笑顔で応じている。
「皆さんこんにちはμ‘sです!」
大きな声で言ったのは穂乃果である。
穂乃果の声に応えるように会場からはさらに大きな歓声が沸き上がる。
改めてμ‘sの人気の凄さというのがわかる光景であった。
「今日はラブライブにゲストとして呼んでUいただきありがとうございます。
A– RISEのライブからスタートし、スクールアイドル全32ユニットによるライブは本当に最高でした。
そして最後にμ‘sがライブをさせてもらえてとても幸せです。みんなありがとう!」
感情を、喜びを爆発させるかのように穂乃果は大きな声で叫んだ。
最高の場所で、最高の雰囲気の中でライブができることが、本当に嬉しいほのかであった。
「私たちμ‘sはホントは3月で活動に終止符を打ちました。
でも多くの人からたくさんの声をいただきました。
まだμ‘sが見たいと。そしてA– RISEからの後押しもあり、今いちどμ‘sとして私たちは今日、この舞台にてライブをやることにしました。
本当にこんな多くの人の前でライブができて幸せです。
あとですねー、オープニングライブでA– RISEのツバサが色々と私のことを言ってたけど、かなり話が盛られているので、真に受けないでくださいね」と言ったのは絵里だ。
会場からは歓声とともに笑い声も聞こえてくる。
オープニングライブでツバサは絵里と希についてのあれこれを色々と語っていたのである。
そんななごやかなμ‘sのMC、穂乃果と絵里を始め、みんなが笑顔でいる中、1人だけうつむくように下を向いているメンバーがいた。
真姫である。
必死に堪えようとしているが、瞳には大粒の涙が溢れそうであった。
やがてそれも耐えることができなくなったのだろう。
真姫は人目をはばからずに泣き出してしまった。
会場からは真姫を心配する声が飛ぶ。そんな真姫の元へ、同級生の2人、凛と花陽が寄り添った。
2人に支えられるような形で真姫が喋りだした。
「すいません…泣くつもりはなかったんだけど…なんだか体きれなくなっちゃって…」
涙とともに鼻をすすりながら言う真姫。
Μ‘sのメンバーの中でもクールな印象が強いだけに、μ‘sファンにとっては意外な光景であった。
真姫を応援するように、会場からは温かい声援が投げかけられる。
「この曲…僕たちは1つの光はμ‘s最後の曲です。私の思いが全て詰まったこの曲をやるまでμ‘sは終われないと思っていました。
そして今日この最高の舞台で最後の曲をやることができて私はとても幸せです。
皆さん今まで…今までμ‘sを応援して、支えてくれてありがとうございました…みんな大好きです…ありがとう…」
最後のほうはもう言葉にならないような声で、絞り出すかのように真姫は言った。
この時点でもう限界だったのだろう。
真姫はμ‘sに対する思い、今日までの日々、そしてμ‘sが終わると言う現実、様々な思いや思い出記憶が感情として爆発してしまい、もう立っていることすらままならなかった。
糸が切れた操り人形かのごとく、膝から崩れて、そのまま大粒の涙を流していった。
さらには連想するかのようにそばにいた凛と花陽まで泣き出してしまう。
会場はざわついている。
心配するように大きな声が飛び交う。
3人に同調するように会場の中でも涙を流している人もいる。
μ'sはこれで終わり…今日が本当に最後…
そんな空気が会場の多くの人に伝わっていた。
大きな声援が送られる中、ステージでは泣いてしまった2年生の3人に、絵里、にこ、希が寄り添っていた。
絵里が花陽、希が凛を、そしてにこが真姫を… 3人が3人男…頭を撫でるように。優しく抱きしめる。
そしてにこが言う
「真姫、凛、花陽、ほらしっかりしなさい。お客さんがこんなに応援してくれるんだから。
ライブはまだ始まったばかりじゃない、みんながμ‘sを待ってくれてるのよ。だから今は笑顔でいなさいな。アイドルって何?みんなを楽しませることでしょう。そのためには自分たちが笑顔で楽しまないと。
終わったら一緒に泣いてあげるから…」にこの言葉はとても優しかった。
後輩の思いの後輩想いの優しいにこ
絵里と希も笑顔でうなずいている。
しっかりしているとは言え、年少組の3人はまだまだ若い高校2年生の少女なのだ。
2つ上の年長組の3人は心から頼りになる存在だった。
優しくて、ときには厳しくて…でも姉妹のようで、そばにいるだけで安心する、そんな存在なのだ。
それにこの3人だけではない。
穂乃果も海未もことりも、会場の皆が、μ‘sに関わってくれた多くの人人が…優しく温かく見守ってくれている。
会場は一体となってμ‘sゴールをしてくれる。
そんな光景を、目に映るすべてのもの、今と言う中で感じるこのすべてをμ‘sのために、そして全ての人のために…
そんな思いで真姫は目元を拭い笑った。
そして会場に向けて大きな声で言った。
「今が最高!」
続く