小野 不由美(著)
戴国の王、驕王が斃れ、蓬山に泰の卵が実る。
新しい泰麒の誕生に女怪の汕子は枝につきっきりだった。
しかし蝕が発生してしまい、泰麒のはいった実は消えてしまい蓬莱に流されてしまう。
泰麒は日本人の子供として育つ。
10年後、雁の麒麟によって発見され蓬山へと帰還する。
泰麒は麒麟としては非常に珍しい黒麒であった。
人間の世界で異分子のように扱われていた彼は、あっさりと別れを受け入れて、泰麒としての生活を受け入れる。
だが、彼には自分の役割が理解できなかった。
それどころか他の麒麟と髪色も違う。
さらには転変もできずに使命を作れない。
天啓も分からずに王気を感じることもできないと悩んでいた。
そんな彼を救ったのは景麒だった。
そして夏至が訪れ、多くのものが昇山してくる。
しかし誰からも王気は見えず天啓もない。
そんな彼の前に現れたのが李斎と驍宗だった。
二人からも王気は見えない。
自分は何もできないと弱気になる泰麒だったが、二人と行動を共にして少しずつ変化を見せて行く。
驍宗は泰麒の持つ力を見抜いていた。
あることがきっかけで泰麒は強大な妖魔を指令にし転変することに成功。
しかしいつまでも天啓はなかった。
王を選ぶ時が迫ってくる。果たして泰麒は誰を王に選ぶのか。
今作は戴国そして泰麒の物語である。
幼い泰麒が自分の存在や役割に葛藤しながら麒麟として成長していく姿、そして戴国泰王の驍宗が誕生するまでが描かれている。
今作には延麒や延王、景麒が登場するが、過去にあまり書かれていない景麒についても描かれている。
王を選んだ時も後悔に苛む麒麟、泰麒。
終始自分との、麒麟としての苦悩を続けるなかで、一国の麒麟として周囲の力を借りながら、成長していく泰麒を描いた今作は非常に好みである。
十二国記。
シリーズを通して面白いファンタジー作品である。