鴨志田 一(著)
クリスマスイヴの夜、美咲と仁の間に何が起こったのか...
仁はイヴに指輪を渡そうと決めていた。
そしてすべてを告げようと。
脚本家と指定先の隣に並べるようになるまで、互いに好きでも今のままではダメだと...そう決めていた。
だが美咲は受け入れる事が出来なかった。
一方で龍之介はイヴでも関係なく仕事に打ち込んでいた。
その龍之介を慕うリタは、イギリスからアプローチを続ける。
また30歳を超え、今だ独身であるさくら荘監督教師の千尋は同僚の友人、小春とや探れて酒をあおっていた。
それぞれの想いを描いた「もう一つのクリスマスイブ」をはじめ、生活破綻者のましろに振り回されて苦悩する空太を描いた「神田空太の普通な一日」、仁の決意を描いた「三鷹仁の大人への階段」、七海が空太をデートに誘うまでの「青山七海の乙女なクリスマス」空太がさくら荘に来て、さくら荘のメンバーとの出会いを描いた「住めば都のさくら荘」の5編からなる短編集である。
さくら荘第5.5弾となる今作も実に面白い。
4巻を補完する内容の物語、ましろの破綻っぷり全開の物語、美咲の宇宙人と呼ばれる所以と言えるような物語、それぞれの恋模様、将来へ向けての決意ありと、さくら荘の魅力が凝縮された一冊と言っていいだろう。
特に「住めば都のさくら荘」では美咲の暴れっぷり、千尋の傍若無人っぷりがとても分かりやすく描かれており、ますます作品にのめりこみ、以降の本編がさらに楽しみである。