ドン・ウィンズロウ著 東江 一紀訳
1975年、発足して2年ほどの組織である麻薬取締局、通称DEAの若き捜査官アート・ケラーはメキシ、コシナロア州に派遣される。
そこでケラーはバレーラ兄弟と出会い、兄のアダンとはお互いに友に近い感情を築いていく。
ある日、アダンはケラーに叔父貴「ティオ」であるミゲル・アンヘル・バレーラと引き合わせる。
ティオはシナロア州の警察官であり、州知事特別補佐官で、そして裏社会の覇権を握る実力者だった。
ティオの協力を得て、ケラーは次々と標的の麻薬農園を解体していく。
だがそれは地獄への入り口でもあった。
密売屋だったアダンの人生は変わってしまい、ケラーもより一層麻薬撲滅にとりつかれてしまう。
やがて二人の間には友情でなく憎悪が渦巻いていく......。
17歳の少年ショーン・カランはバーで友人が撃ち殺されそうになり、相手を射殺してしまう。
それが始まりでイタリア系マフィアのチミーノ一家と関わるようになり、カランの殺し屋の人生が始まっていく...。
美人女子大生ノーラ・ヘイデンは金とコカインのために売春をしていた。
その後スカウトされたノーラは高級娼婦となって生きていく...
全ての若者の背後には、常に麻薬というものが存在している。
やがて長きに渡る麻薬戦争が始まって行くのだった...
シリーズ3部作の第1作。
私は完結編の第3部 the Border を先に選んで今作を読んだが、逆にそれが良かったかもしれない。
単体作品としても十分楽しめるし、過去の出来事を後から読んで繋がっていき、なるほどと楽しめる部分が多かった。
1975年から約30年に渡る麻薬戦争を描いた犯罪小説の大作。
BAC,CIA, 麻薬カルテル、マフィアに売春婦と、立場は違うが麻薬を巡るそれぞれの人間の生き様、人生そのものを描き、その中でヒューマン・リレーション が30年にもわたって展開していく。
第一作ではアランとケラーの闘争にケラーが勝利するまでが描かれ、その後第2部へと続いていく。
正義、権力、金、欲望のために多くの者が登場し、死んでいく。
まさに犯罪小説の傑作である。