ジェフ・カールソン 著 中原尚哉 訳
地球からはるか遠くにある木星。
その周囲を取り巻く多数の衛星の一つエウロパ。
月程度の大きさのこの星は氷におおわれている衛星であり、その氷は水が凍ったもので、かねてより、生命の存在が囁かれていた。
また、この星は天然の給油所であり、その資源は人類にとって魅力的で価値のあるものだった。
22世紀初頭、エウロパを採掘調査していた無人メカにより、有機生命体の小さな虫の死骸が発見された。
エウロパの氷の下には火山と液体の海が広がっており、そこで生命体は環境に適した形で進化し、存在していたのである。
さらに、氷の内部には刻印と思われるものが発見される。
それらは知能を有する生命体の存在をし舜するものだった。
旦ちに人類は国際科学捜査チームを結成し、エウロパへと派遣する。
エウロパに到着した女性科学者のボニーは2人の仲間と共に調査を進めていく。
彼女達の後を追い、ブラジル、中国、アメリカ航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)より2人の専門家が到着する予定となっており、3人は深い調査は控えるように指示されていた。
だが3人は構わず、氷の奥の調査を進めていく。
しかしその途中、氷の崩落が起こり、ボニー以外の2人は 命を落としてしまう。
負傷しながらも生きながらえたボニーはAIのゴーストと共に氷の奥へと進んでいくが、そこで未知の生命体と遭遇するのであった...
この作品は地球外生命体とのファーストコンタクトを描いた物語だ。
まず、これぞSFと言わんばかりのタイトルに惹かれる。
内容的には目新しい要素はないが、人類にとって、まだ道の領域であるエウロパという星を、その想像力と英知により書き上げた筆力はすごい。
ただ未知とのファーストコンタクトではなく、近未来における地球においての利権や名誉等が絡みあり、陰謀もあり、物語としての厚みも十分にある。
オープニングからヒロインが未知の生命体に襲撃されているシーンから始まり、徐々にその正体が明らかになっていく。
様々な危機を乗り越え、ボニーが最終的に下す決断...
一気に読み進めてしまう作品だろう。