無尽蔵の燃料基地か

凍りついた空 エウロパ2113


凍りついた空 エウロパ2113

ジェフ・カールソン 著 中原尚哉 訳

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ジェフ・カールソン 著

中原尚哉 訳

地球からはるか遠くにある木星。

その周囲を取り巻く多数の衛星の一つエウロパ。

月程度の大きさのこの星は氷におおわれている衛星であり、その氷は水が凍ったもので、かねてより、生命の存在が囁かれていた。

また、この星は天然の給油所であり、その資源は人類にとって魅力的で価値のあるものだった。

22世紀初頭、エウロパを採掘調査していた無人メカにより、有機生命体の小さな虫の死骸が発見された。

エウロパの氷の下には火山と液体の海が広がっており、そこで生命体は環境に適した形で進化し、存在していたのである。

さらに、氷の内部には刻印と思われるものが発見される。

それらは知能を有する生命体の存在をし舜するものだった。

旦ちに人類は国際科学捜査チームを結成し、エウロパへと派遣する。

エウロパに到着した女性科学者のボニーは2人の仲間と共に調査を進めていく。

彼女達の後を追い、ブラジル、中国、アメリカ航空宇宙局(NASA)、欧州宇宙機関(ESA)より2人の専門家が到着する予定となっており、3人は深い調査は控えるように指示されていた。

だが3人は構わず、氷の奥の調査を進めていく。

しかしその途中、氷の崩落が起こり、ボニー以外の2人は 命を落としてしまう。

負傷しながらも生きながらえたボニーはAIのゴーストと共に氷の奥へと進んでいくが、そこで未知の生命体と遭遇するのであった...

この作品は地球外生命体とのファーストコンタクトを描いた物語だ。

まず、これぞSFと言わんばかりのタイトルに惹かれる。

内容的には目新しい要素はないが、人類にとって、まだ道の領域であるエウロパという星を、その想像力と英知により書き上げた筆力はすごい。

ただ未知とのファーストコンタクトではなく、近未来における地球においての利権や名誉等が絡みあり、陰謀もあり、物語としての厚みも十分にある。

オープニングからヒロインが未知の生命体に襲撃されているシーンから始まり、徐々にその正体が明らかになっていく。

様々な危機を乗り越え、ボニーが最終的に下す決断...

一気に読み進めてしまう作品だろう。