日向夏(著)
花街で薬屋を営んでいた猫猫。
薬草を探しに森へ出かけた時に、人攫いに拐かされ後宮へと売られてしまう。
そして下女として働く事になってしまった。
好きで来たわけではないが、給金は出るし2年ほど勤めればそのうち出られるので猫猫はおとなしく真面目に働いていた。
お手つきになることもないと考えていた。
だが彼女は好奇心や知識欲を抑えることができなかった。
そこで耳にした後宮で生まれる乳幼児の連続死。
帝の御子が皆短命であり、存命の二人も重い病だと知る。
無能な下女を装っていたが、宦官の壬氏に字が読める事を知られてしまった猫猫は玉葉妃の元へ連れて行かれ、自分の子の命の恩人として感謝される。
赤子の症状を見て、彼女は対処法を書き残しておりそれで猫猫とばれてしまったのだ。
知らぬふりをするが、手遅れである。
本人の望んでいない出世をしてしまい、皇帝寵妃の侍女となってしまう。
彼女の役割は毒味役であり周囲から哀れな目を向けられるが、むしろ猫猫にとって喜ばしいものだった。
好奇心が故、彼女は様々な毒を体に入れており毒が効かないのだ。
その特殊な能力と薬師としての知識を手に猫猫は後宮で起こる毒がらみの事件を解決していく。
中世の東洋を舞台とした宮廷で、薬師の少女が事件を解決していくミステリー作品である。
主人公の猫猫がまた癖が強く、口には出さずとも辛辣なことを思っていたり、一方で迂闊なところもあったりと実に良い味を出している。
章も細かく区切られていて、薬に関する専門的な言葉も出てこないのでとても読みやすい。
薬と毒が大好きな少女と言うと、少々危ういが個性的な少女が活躍する宮廷ミステリー、大人が読んでも十分に楽しめるラノベ作品だろう。