ケン リュウ (著), 古沢 嘉通 (翻訳)
巨大な小惑星が地球に接近し、人類は共同避難事業を計画するが、世界各国は失望に包まれる。
宇宙船建造の失敗。
多くの人類に残されたのは小惑星の軌道がそれるのを祈ることだけ。
だが祈りは届かなかった。
しかしアメリカは軌道上に秘密の船を一機所持しており、生き延びた人類もいた。
宇宙船の設計者である博士と知り合いだった母により、船に乗って日本人唯一の生き残りとなった清水大翔。
宇宙船にトラブルが発生し危機に陥ってしまった時、大翔は父の教えを思い出す。
詩句から得た気持ち、万物は流転する。
その気持ちを物の哀れと言う…
その教えをもとに大翔は残された人類を救うためにある決断を下す。
表題作「もののあわれ」をはじめ、宇宙にいる様々な種族の知恵を伝えるための本を作る習性を描いた「選抜宇宙種族の本づくり習性」、不死と言うのをテーマに描かれた「円弧」、「波」、妖怪退治師である少年が、妖狐である少女を助けた事から始まった2人の交流を描く「良い狩りを」ほか全8作を収めた短編集である。
ケン・リュウの短編傑作集第2弾。
今作は紙の動物園 と比べると、よりSFの要素が強い作品群となっている。
どの作品も素晴らしいが、代表作である「もののあわれ」は、1秒だろうと10億年だろうと最終的には消えゆく運命にある一時的なパターンであると言う、万物は流転すると言う考えにより、主人公がとった行動に感動するし、2021年公開の映画「Arc アーク」、原作の「円弧(アーク)」は人類にとって究極のテーマとも言える不死と言う題材を扱っていて、その世界で生きる女性を描いている。
他の作品も読み応えのある作品ばかりである。
短編初心者の人でも読みやすいお勧めの作品である。