連合王国編の完結

86―エイティシックス―Ep.6 ―明けねばこそ夜は永く―


86―エイティシックス―Ep.6 ―明けねばこそ夜は永く―

安里 アサト著 

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安里 アサト著 

死んだらレギオンにされる恐怖

連合王国軍とレギオンの戦いは続く。

連合王国軍はレギオンの攻勢に押し込まれていた。

生き延びるためには竜牙大山を制圧しるしかない。

そこは火山であり、灼熱が舞う戦場であった。

一方、先の戦闘で帰還した86の面々には心境の変化が起きていた。

死ぬ事しか許されなかった86...

しかし死んだ人間の脳組織を利用し、人の形をした半自立兵器のシリンを見て、それぞれが苦悩していた。

それは特にシンを悩ませることになる。

そしてレーナとの関係についても悩むシン。

望んでもよいと言われた。戦う理由を、生き残る意味を考えた事もない未来の姿を...

そんな不安定な心境のまま、連合王国軍は竜牙大山での戦闘に突入していく。

無慈悲な女王の鹵獲、そして竜牙大山制圧にすべての命運がかかっていた。

戦闘中、シンは仲間から分断されてしまい孤立無援となってしまう。

火山口付近で対峙するのは死んだ86の脳を取り込んだ羊飼い、フォニクスと呼ばれるレギオンであった。

シンとの一対一の戦いを選択したそのレギオンの姿は、人の形に似た、近接攻撃と機動力に特化したものであった。

激しい戦闘の末にシンは死を覚悟する。

だが、初めて死にたくないとの想いが過ぎる... 生きる事とは何か...連合王国フィナーレである。

86の第6弾、今作では揺れ動くシンの心の模写が多く、また、レーナが自分にとって大切な存在である事に気付いていくシンの姿が描かれている。

死ぬ事で失うもの、生きる意味... 死ぬ事しか道はなかった86、そしてシンにとってはそれは考えたこともないものであり、葛藤の中で少しずつ答えを見つけていく。

不器用な2人が距離を縮めていく中で、最後にシンが見せた笑顔が印象的である。

EP.5 からの連合王国編が完結し、今後86がどうなっていくのか、シンとレーナの関係、レギオンの真相等、まだまだ楽しみはつきない作品である。

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