斜線堂 有紀 (著)
山に囲まれた小さな集落昴台。
人口1000人ほどの小さな集落に、とある病気のために建てられた療養所、昴台サナトリウムと言う施設が存在する。
多発性金化筋線維異形成症。
通所、金塊病。
この病にかかると患者の体は死後、極めて筋に近い物質えと変異するのだ。
原因の全くわからない生平患者の収容施設に反対する者も多数いたが、村和国から助成金が高く入るため、施設の建設を受け入れた。
建設されたサナトリウムの塀には、落書きや、グラフィティーアートが多数描かれており、その中の1つ、2月の鯨と名付けられた、巨大な鯨の餌とともに反対波野びらんが貼られている。
江都日向と言う少年がそれを見つめていると、マフラーが落ちてくる。
持ち主はサナトリウムに唯一入院している患者、都村弥子だった。
それがきっかけで出会った2人。
日向はマフラーを返すために弥子の元へ。
弥子は自分の体は死後3億円で売れる、その自分の死後の体を相続しないかと日向へ持ちかける。
日向は劣悪な家庭環境で育ち、高校にも進学できない自分の将来を憂いていた。
そんな時に出た相続の話。
だが弥子は相続に条件を出す。
その条件はチェッカーと言う盤上ゲームで自分に勝つこと。
こうして3億円をめぐっての、チェッカーでの勝負の日々が始まる。
致死の病である金塊病。
弥子に残された時間はわずか数ヶ月。
2人はチェッカーを通して少しずつ距離を縮めていく。
だが、大金が絡む病気を、2人以外の人間が放っておくわけがなかった…
この作品は絶対に死ぬことがわかっている少女と、希望を持てずに生きていた少年による愛の物語である。
日向の動機は金と言うわかりやすいものであったかもしれないが、弥子は彼によって救われていた。
大学生と中学生と言う歳の差がありつつも、少しずつ惹かれていく2人だが、絶対に失われてしまうことがわかっている。
死ぬことに対する価値が決められており、それを知った人間はどうやって生きていけばいいのか。
愛や恋といった目に見えないものをどうやって証明するのか。
本当に大切なものは何なのか。
斜線堂さんの作品はいつも訴える力があるが、この作品もそんなことを考えてしまう作品である。