音乃木坂図書室 司書
週末の土曜日のこと。
普段土曜日は、学校で練習するをすることが多いスクールアイドルであるがこの日も雨が降っており、μ‘sicforeverの練習は休みとなっていた。
そんな状況ではあるが、学園祭が近づいていると言うこともあり何もしないわけにはいかないので、Printempsの2人、ことりと花陽はアキバの街にいた。
大きなサングラスをした花陽と、帽子をかぶったことり。
この2人だけでと言うのは割と珍しい組み合わせである。
2人とも全員と仲が良いのは周知の事実であるが、ことりには常に穂乃果と海未が、花陽には凛がいつも一緒にいるので、ことりと花陽の2人きりと言うシチュエーション自体が珍しいのである。
Printempsとして一緒に活動することになり、この日2人は衣装の素材を買い出しに来ていたのだ。
また花陽が実はアニメ好きと言うことを知ったことり。以前にも増して2人は仲良くなっていたのである。
ちなみにPrintempsいつ練習しているのかと言うと、学校で打ち合わせや練習をする事はなく、たいていは穂乃果の家で行っている。
高坂家の裏庭は広いので、3人でなら余裕で練習ができるのだ。
そのためRay-OGの3人も、よく高坂家にて練習を行うことがある。
と言う訳もあり、ここ最近ことりと花陽が一緒にいることが増えているのであった。
「花陽ちゃん付き合ってくれてありがとう。おかげでかわいい素材見つけることができたよ」
「うん、てゆうかPrintempsの衣装間に合う? μ‘sicforeverの衣装もことりちゃんがやってくれてるし大変でしょ。私も手伝うからいつでも言ってね」
「ありがとう花陽ちゃん。でも大丈夫だよ。もうデザインもできてるし、2~3日もあれば余裕だよ」
「すごいなぁことりちゃんは。いつもかわいい衣装を作ってくれてありがとうね。Printempsの衣装楽しみにしてるね」
「うん、任せておいて。最高にかわいい衣装を作るからね」
「ことりちゃん、今日この後は何か予定あるの?」
「特にないよ。μ‘sicforeverも今日はオフだし。だから家帰って衣装作りかなぁ。μ‘sicforeverの衣装の仕上げと、Printempsの衣装制作だね」
「そっかあぁ、ねーことりちゃん。帰る前にレディオ会館寄ってかない?」
「あぁ、いいねぇ。行こ行こっ」
そう言うや2人は秋葉駅前にあるレディオ会館へと向かった。
ここはにこの御用達の場所であり、アニメやアイドルが好きな人にとっては外せない場所だ。
日本人だけでなく、海外からの観光客も多く訪れる場所であり、常に賑わいを見せているのがレディオ会館である。
とあるフロアのアニメグッズを大量に取り扱う店舗へ到着するや、花陽の目はサングラス越しでもわかる位の輝きを放っていた。
そこにはフィギアや、ぬいぐるみタペストリーや様々な小物といったグッズから、レアで高価なプレミアグッズまで多数取り揃えられており、アニメ好きな人にとっては天国のような空間である。
「ねー花陽ちゃん、何か欲しいものあるの?」
「うん…アイレボって言うアニメがあってね。アイレボってのはアイドルレボリューションの略なんだけど、そのアニメのジャンボ寝そべりのぬいぐるみがあって。みーあちゃんの…登場人物でみーあちゃんて子がいて、その寝そべりが欲しいな。でもプレミアついてるみたいでなかなか売ってないんだ」
「みーあちゃんかわいいよね。でも私はぱいるちゃん推しかな」
ことりのその言葉を聞いた瞬間、花陽の表情は大きく変わる。
「えっ…ことりちゃんアイレボわかるの…?」
「うん、わかるよ。私も好きだもん」
「うあぁ、嬉しいなぁー、ぱいるちゃんもかわいいよね!」
ことりに対しさらに親近感を抱く花陽。
ぬいぐるみゾーンに行くものの、残念ながらお目当てのものはなかった。
人気のあるものはすぐ売れてしまうが、レアなものはあまり入荷することも少ないのだ。
そこでことりが声をかける。
「花陽ちゃん、みーあちゃんのタペストリーならあっちにあったよ」
そういってことりはタペストリーコーナーを指差す。
「タペも欲しいんだけど…好きなアニメのタペまで買い出したら大変なの。お金もそうだし、部屋が…だから自粛してるんだ」
「あっそうか、花陽ちゃんはアイドルグッズもたくさんあるからだ」
「うん、、これ以上増えると、カオスの部屋になっちゃうから…」
花陽は相当のアイドル好きで、アイドルグッズはかなり持っている。
さらに好きなアニメのグッズも買っており、花陽の言う通り、これ以上グッズが増えると大変なことになってしまうのだ。
以前に自分の部屋以外にも、グッズを置こうとして家族に止められたことがある位なのである。
「そういえば…花陽ちゃんの家って上がったことなかったね」
「確かにそうだね。みんなで集まる時って、場所的にいつも穂乃果ちゃんの家ばかりだもんね。穂乃果ちゃんの家はおいしい和菓子も出るし。よかったら今度私の家にも来てやことりちゃん」
「それじゃ今度のPrintempsの打ち合わせは、花陽ちゃんの家でやろう。花陽ちゃんの部屋、楽しみだなぁ」
いつも集まる時は大体穂乃果の家である。
それぞれみんなの家の場所は知ってはいるが、入ったことがある家はそんなに多くないのだ。
音乃木坂から1番近い穂乃果の家が、μ‘s時代からいつもみんなの集まる場所となっていた。
ちなみに他のみんなの家はと言うと、海未の家が穂乃果の家から徒歩3分位の場所で、ことりと花陽と凛は御徒町寄り、真姫は御茶ノ水寄り、にこと希は秋葉駅の反対口側で、絵里は小川町寄りである。
そんな会話をしながらレディオ会館を後にする2人。
気づけば時刻はすでにお昼は大きく回っている。
「お腹すいたなぁー。もうこんな時間か…」
時計を見てぼそっとつぶやいた花陽にことりは言う。
「そうだねどこかでお昼食べていこか。私もお腹空いちゃった」
「いいの?やったねー嬉しいなぁ。どこでお昼食べる?私は白米が食べたいのです」
とてもうれしそうにする花陽を見て、可愛いなぁと思うことりであった。
ことりは一人っ子である。
穂乃果と海未はそれこそ姉妹のように育ったが、やはり一人っ子が故、姉妹に対して強い憧れを持っていた。
特に小さい頃は妹が欲しいと思っていた位である。
なのでμ‘sの、そしてμ‘sicforeverの仲間であり、友人である花陽はことりにとっては自分になついてくるかわいい年下の妹みたいな存在に感じられていた。
姉に甘えるような仕草を見せる花陽の手を取り、ことりは歩いて行った。
続く