ガレス・L・パウエル (著), 三角 和代 (翻訳)
群島戦争は血みどろの戦争だった。重巡洋艦AIである〈トラブル・ドッグ〉はは14歳の少女であり、人間と犬の遺伝子から殺戮を目的に作られた人工知能である。
彼女は提督の命令を受けて、とある惑星の知的ジャングルを完全に破壊する作戦に加わっていた。
それは圧倒的な大虐殺だった。
心に拭いきれない傷を負い、嫌気がさした彼女は軍を 辞めた。
武装を外し、終戦後に彼女が加わったのは、再生の家と呼ばれる人命救助団体だった。
戦時は医療フリゲート艦の指揮をとっていて、敵であったサリー・コンスタンツを艦長として迎え、彼女は贖罪をするかのように人を救う活動をしていた。
彼女の艦に乗るのは、レスキューのスペシャリスト、アルヴァ・クレイ、新米衛生兵だが、全く何の知識もないプレストン・ドラフ族と言う宇宙人で機関士を務めるノッドである。
ある時、彼女は遭難信号を受け取る。
すべての惑星がオブジェのように彫刻された星系・ギャラリーを航行していた民間船が撃墜されたのだ。
急いで救助に駆けつける彼女たち。
その船には詩人のオナ・スダクも乗船していた。
しかしこの遭難はただのレスキューではなかった。
彼女たちは銀河の命運を賭けた戦いに巻き込まれてしまうのであった。
本作は三部作の一作目である。
〈トラブル・ドッグ〉を始め、登場人物は皆、過去に何かしらあった人たちであり、様々な葛藤や人間模様が描かれている。
少女の姿をしたAIは、人間と犬の遺伝子から作られていると言う設定がまず面白いし、そのせいか人の気持ちがわかるようで、わかっていないようなキャラ感が良い。
物語は複数の登場人物の視点でテンポよくリズミカルに進んでいくので、とても読みやすい作品に仕上がっている。続編も楽しみである。