古宮 九時 (著)
大国マルサスの次期王位継承者のオスカー。
彼は幼い頃に受けた呪いを解くために、大陸に5人しかいない魔女のうちの一人、青き月の魔女の住む塔へとやってきていた。
魔女は長きに渡り、怖れと災厄の象徴である。
青き月の魔女は塔を登りきったものには望みを叶えてくれると言われている。
オスカーは解呪のため従者である青年一人を連れて塔を登っていく。
オスカーの呪い、それは子孫を残すことができないというものだった。
つまりファルサス王家はオスカーを以て絶えることを意味する。
謎や罠、魔物によりもう70年も頭を登りきったものはいない。
最後に登ったのは彼の曽祖父だったが、そんな塔をオスカーはあっさりと登りきってしまう。
彼は王太子であり、とても強かったのだ。
最上階で待っていたのはティナーシャという16歳ぐらいの魔女だった。
彼女はオスカーが、70年前にきたファルサス王族レギウスの曾孫であることを知り、驚きを隠せないでいた。
そのティナーシャにも複雑に絡み合うオスカーの呪いを解くことはできないと言う。
解決策の一つとして、胎児の守護力に耐えられる強い女性を見つければ良いというが、世界に一人いるかもわからない。
それを聞いてオスカーは達成者の望みとして、ティナーシャが妻になるように求める。だが彼女は受け入れることができない。
その代わりとして、オスカーの下で彼の守護者として共に1年間暮らすという契約を交わす。
こうして王太子と魔女の物語が始まる。
評判通りの作品だ。
ファンタジーが好きな人、そうでない人でも楽しめる作品である。
まずキャラがとても魅力的であり、初々しいティナーシャに真っ直ぐな王子の二人の関係ややりとりが絶妙である。
もちろんストーリーもよい。
長い年月を生きる魔女という存在だからこそ、その過去に秘められた謎や国家の歴史などこの先に明らかになっていくだろう事が多数あり、シリーズの続きが待ち遠しいファンタジーとラブストーリーが融合した傑作である。