ジェイムズ・P・ホーガン 著 池 央耿訳
原子物理学者のビクター・ハント、メタダイン実験工学部長のロブ・グレイの2人はトライマグニスコープ(物体の内部を詳細に観察することができる装置)を開発したコンビである。
ある日、ハントはロンドンからアメリカのポートランドへ行くよう上司から命令される。
その理由を告げられることもなくである。
マンモス企業のIDCCポートランド本社に着いたハントとグレイ。
上司から告げられたのは、国連宇宙軍、UNSAが協力を求めていると言うことだった。
その内容は驚くべきものであった。
月面調査隊が月で死体を発見したのだ。
ただ、その死体は死後5万年以上の歳月が立っていたのである。
さらに月の裏側ではありえない現象や、多くの人骨が発見される。
原型をとどめていた死体をチャーリーと名付け、ルナリアン(月星人)として調査と真相解明を求められたのだ。
研究を重ねるうちに、ほぼ人類と同じ構造であるが、地球人ではないこと、発見された所持品から謎の言語が書かれたものや、現在より100年は進んでいるであろう技術が発見される。
しばらくして木星の衛星、ガニメデで地球のものではない宇宙船が発見される。
これによって多くの仮説が説かれる。
過去、太陽系には火星と木星の間にもう一つ惑星が存在していた。
その星をミネルヴァと呼ぶこととし、ガニメデには生命があり、それをガニメアンと呼ぶこととして、遥か昔に優れた知能を持った生命体がいたと言う説が生まれた。
謎は謎を呼び、1つ物事を解明するたびに、さらに多くの疑問が生じていく…
だがついにハントによってその謎は1つの答えを導いたのである。
予想だにしなかったその答えとは一体何であるのだろうか…
SF小説とは何か…
数あるSF小説の中で激しい戦闘が描かれるような作品もあれば、淡々と描かれる作品もあったりと多種多様である。
この作品は後者である。 作風として近いものといえばソラリスあたりであろうか。
物語は大きな展開や変化もなく、月で発見された死体、チャーリーの謎の解明を淡々と描かれているだけである。
にもかかわらず、とても面白い。
謎を解くたびに、次々と謎は深まっていく。
まるでミステリー小説を読んでいるかのような気分である。
ストーリーはチャーリーとコリエルと言う名の人物が月で活動しているところから始まるのだが、そこからハントらが謎の答えを解明し、最後のエピローグへとつながっていくストーリーの仕立て方に、SFを読んだ充実感に満たされた。
そして本のタイトル「星を継ぐもの」と言う意味がわかるだろう。
ハードSFと歌われてはいるが、とても面白く読みやすい作品である