ジョン スコルジー (著), 内田 昌之 (翻訳)
銀河連邦の旗艦、イントレピッド号のクルーは遠征のたびに、多くの犠牲者を出していた。
人命の損失が目立ち、より多くのクルーを必要としていた。
新任少尉であるダールは少し特異な経緯を経てアカデミーに入学しクルーとなった。
イントレピッドに乗り込む前に、彼は同期である女性クルー・デュバルと出会う。
彼女は地上部隊に属しておりそこからの転属だった。
ダールは友人で資産家の息子であるハンスンらとともに船に乗り込む。
ダールは衛星チームに加わり探査することを希望する。
彼らは次第にこの艦には、何かとんでもなくおかしなことが起きていると考える。
謎のボックスの存在や特定の士官たちの周りで人が死ぬと言う事実が明白になっていく。
任務に出ると、必ずと言っていいほどクルーは死ぬ。
しかし上級士官は絶対に生き残る…
その中でもケレンスキー航宙士は何度も死にかけ、大怪我をし疫病にかかっているにも関わらずに、すぐ回復している。
明らかに何かがおかしい…そしてやがて1つの事実が判明する。
自分たちの命は何者かに操られている。
それは実在しない虚構の存在であった。
とあるSFドラマが彼らの現実を侵食して、ねじ曲げていたのだ。
つまりSFドラマにおいて、絶対に死なない5人の上級士官は主役であり、それ以外の死んでいくものはエキストラだったのである。
しかし最悪なのはそこではなく、そのドラマの出来が良くないと言う事だった。
彼らは生き残るためにある計画を実行する。
果たして彼らの運命は…
この作品はスタートレックへのオマージュ、パロディー精神あふれる内容となっている。
スタートレックをあまり知らない自分でも十分に楽しめた。
特にタイムトラベルしてからの物語の展開は最高だ。
ケレンスキーは読んでいて笑ってしまう位にユーモア満載で、他のキャラも個性豊かである。
「老人と宇宙」シリーズ等で垣間見えていたユーモアが、この作品では至る所で見られるので、終始笑いそうになる位面白い。
ただのパロディーでなく、きちんと原作に対しての敬意と愛情も感じられる。
スコルジーの魅力がぎっしり詰まった一冊であろう。