小野 不由美(著)
戴国に麒麟が戻って来た。
世界北東にある戴国は極寒の地であり、王は不在で荒れ果てていた。
王はかつての部下、阿選の謀反により弑げられ、6年前から消息が不明となっていた。
偽王阿選によって民は虐げられ、多くの者が処刑され、里は焼き払われる。
驍宗に仕えたかつての部下たちは逃亡し、機会を待つように隠れ忍んでいた。
項梁もその一人であり、かつての禁軍中軍にいた男は行商として母子2人と共に旅をしていた。
だが3人は何者かに襲われてしまう。
しかし3人は隻腕の女と黒髪の少年に助けられる。
それは将軍の李斎と泰麒であった。
戴国の麒麟は蓬莱出身の黒麒であり、6年前の蝕により向こう側へ流されてしまったが、李斎、そして景王や延王の助力により救出されたのであった。
白雉は落ちていない。つまり王は無事という事。
泰麒らは王を救うために動き出したのだ。
しかし...泰麒のとった行動は別行動だった。
李斎に告げぬまま、項梁らと共に向かった先、それは鴻基にある白圭宮、偽王阿選がいる場所だった。
李斎らもそれぞれ王を救うために動き出した。
白圭宮へと辿りついた泰麒だが、そこはもはや全く機能していなかった。
阿選は政を一切行わずに引き込もっていたのである。
そんな阿選に泰麒は告げた。 あなたが新王であると...
一方で李斎一行は国の北部で驍宗の行方を追っていた。
王が襲われた函養山、その周辺の里々は荒廃し、それが国中へと蔓延していた。
そしてそんな一行の元に恐れていた報せが届いてしまう。
主上が亡くなられたと... その後阿選は公の場へ姿を現すようになる。
だが泰麒は本心で阿選を新王と言ったわけではなかった。
そこには深謀が隠されていた。
それと共に驍宗を探していた李斎一行に主上は死んでいないという報せが届く。
さらにその居場所までも判明する。
泰麒の計画、驍宗の生存、物語は大きく動き出す。
短編や黄昏の岸暁の天を通し、今作の白銀の虚玄の月にて戴国の玉座を巡る物語は完結する。
まさえに傑作としか言いようのない作品だ。
黄昏の岸暁の天にて泰麒を救出し、戴国へと戻った李斎と泰麒。
かつての驍宗の部下たちは逃亡し、国中に散ったが誰も諦めず王の無事を信じて国を立て直そうと行動していく。
多くの犠牲も生じるが、すべては王、そして国のためという中で、7年ぶりに王と再会する場面は目頭が熱くなる。
3巻では阿選の心境、驍宗が生き残れた理由が明かされ、謎に包まれたいた部分が見えて来て、一気に物語は加速する。
個人的には阿選を討つまでの戦いを描いてほしかったが、それを抜きにしても最高に面白く、感動する作品だ。
これで戴国の話は一段落だろうが、十二国記の国々はまだまだ謎も多く、今後の作品がより一層待ち遠しい限りである。