あまさきみりと(著)
別にいつ死んでもいい...そう思っていた。
20歳の松本修は大学を中退し、地元へと戻っていた。
仕事もせずに引き込もる彼は石に余命を告げられる。
何もしなければ余命半年とー 自身をゴミクズと表し、生きる価値などないとすら思っていた。
実家に戻って半年、田舎の町では噂はすぐに広まる。
隠していたが、ある事をきっかけに修が戻っている事はすぐ伝わってしまう。
そんな彼の目に飛び込んできたTVのニュース...
SAYANEという人気シンガーソングライターの活動休止のニュースだった。
そして母から告げられた言葉、幼なじみの桐山鞘音が実家に帰っていると...
SAYANEは修と幼なじみだった。ずっと一緒だった2人。
だが、今の修は逃げ続けているクズで合わせる顔などなかった。
しかし兄のような存在のトミさんに誘われ、廃校が決まった母校の中学校を訪れた時、そこには鞘音がいたのだ。
5年ぶりの再会...
だが気まずさだけがただより、修の思った通りであった。
その後の2人はトミさんによって、少しだけ昔の距離感を取り戻していく。
そして町の祭りへと参加する事になるのだが...
不器用で逃げ続けて、夢をあきらめてしまった修と鞘音が織りなす、20歳の青春ストーリーである。
この作品は天才と謳われるシンガーソングライターの鞘音、一方は凡人であり、何をやっても中途半端であきらめて逃げ続けていた修の2人が、音楽を通じて失われた時間、青春を埋めていく感動の青春物語だ。
多くの人が自分の夢をあきらめてしまう世の中で、まさに今の若者といった感じの修に共感できる人も多いのではないだろうか。
不治の病にかかっており、余命も長くない修が、鞘音との約束を、昔の次巻を取り戻そうと必死になる姿は心を突き動かされるだろう。
結末もそうだが、自身の病の事は周囲に告げていない修。
それが次巻以降、どう展開していくのか楽しみである。