生きることに絶望した立井潤貴

僕が僕をやめる日


僕が僕をやめる日

松村 涼哉(著)

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松村 涼哉(著)

死ぬくらいなら、僕にならない?

19歳の立井潤貴、彼の住所は宿泊所。

そこは生活保護受給者から費用を搾取し、住まいを与えると言う悪質な場所だった。

母親はなくなり、父は失踪し、高校を中退した彼には他に行くあてもない。

腰痛の為、できる仕事も限られている。

その彼に、若さを買われ、宿泊所の管理者より上の人間から管理者として採用したいとの話。

しかし彼はすぐに断った。

入居者から金を搾取し、殴ったり脅したりする仕事に、彼の心は動かなかった。

そして宿泊先を出た立井は死ぬことを考える。

自分は世界に必要とされていない。

だから死のうと…

公園の桜の木に紐を結び、後は、首をつるだけと言う時、彼に声をかける青年がいた。

死ぬぐらいなら自分の分身にならないかと青年は言う。

まだ死にたくないというのが立井の本音だった。

青年は高木健介と名乗り、立井は自殺寸前のところを救われた形となった。

そして立井は高木として生きていく。

高城のマンションに共に住み、高城の身分証で生活し、大学へと通う。

他人になりすまし、日常の生活を手に入れた立井。

一方の高木はほぼ外に出ることもなく、部屋にこもる生活。

彼は小説家だった。

自分は小説を書く事に全てを捧げ、立井に高木として大学生活を遅らせる。

そして2年の月日が流れある日、高木は突然失踪してしまう。

そして高木になりすましている立井は殺人容疑をかけられてしまい…

立木は高木の後を追う。

その過程で壮絶な過去が明らかになっていく。

この作品はミステリーであるが、扱っている内容がとても重たい。

現実にあっておかしくないことであり、悲しすぎて切なすぎる過去を抱えた少年の人生を描いた物語だ。

高木の描く小説は全てが、自分の人生での体験経験であり「杭」原案では胸が締め付けられる思いであった。

問題を提起するような衝撃的な作品であり、作者の筆力とともにすごい作品だと思う。

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