音乃木坂図書室 司書
江戸川花火大会は19時半スタートであり、17時過ぎに現地へと到着した6人。
すでに会場の臨海公園は大勢の人で溢れていた。
良い場所は有料席となっていて、事前に全て埋まっている。
とはいっても会場は広大なスペースを誇る公園であり、有料席でなくとも十分に花火を鑑賞し、楽しむ場所は多々あるのだ。
そのため、早い時間から多くの人が場所取りのため来場していた。
会場では、出店も多く、多数軒を連ねており、とても賑わっている。それこそまるで夏祭りかのような雰囲気であり、案の定穂乃果のテンションはすごく高かった。
その姿ははしゃぐ子供そのものである。
「うわぁー、何食べよう…チョコバナナにりんご飴に、たこ焼きに焼きそばも捨てがたい…ベビーカステラも食べたいし、…」
そんな言葉を漏らす穂乃果に、5人はきっと全部食べるんだろうなと思ったのは言うまでもない。
「ねぇ、クレープ屋さんもあるよ。!」と言うのはことりだ。
さらに凛も言う。
「ラーメン屋さんはないのかなあ…ラーメン食べたいにゃー」
さすがに出店でラーメン屋はないだろう…と皆が思っていた。
花陽が言う。
「焼きそば屋さんはあるけど、さすがにラーメン屋さんは… あるし!」目を疑う花陽。
目の前にはラーメン屋台が…しかもなんと都内有名店の屋台である。
「はぁ!麺屋小次郎だ。テンション上がる」
ラーメン大好きや星空さんは大喜びだった。
「もぅ…みんな子供みたいにはしゃいじゃって…やれやれ、…」と言うのは真姫であるが、そんな誰よりもそんな真姫は誰よりも早くわたあめを買って食べている。
いつもは穂乃果を注意する。海未でさえこの日は違った。
ことりと一緒にクレープを買っておいしそうにほおばっていた。
全員がそれぞれ好きなものを買って食べ、花火大会、お祭りのような雰囲気を楽しんでいた。
そして徐々に日が暮れていく。
もうまもなく花火大会が始まろうとしている。
6人は公園の芝生の上にレジャーシートを敷いて座り、花火のスタートを待っていた。
6人の周囲は多くの人が同様に花火を待ちわびている。
穂乃果は花火大会が始まるまでに食べると言うことで、たこ焼き、お好み焼き、焼きそばを買ってきていた。
粉ものばかりだ。
ちなみに、会場に来て、すぐにチョコバナナ、りんご飴、ベビーカステラ、ジャガバターを平らげている。
さすがの海未も黙ってはいられなかったのだろう、しかめ面で言う。
「穂乃果…今日はこんな場所ですし、言うつもりはなかったですが。やはり言わせて貰います。食べ過ぎですよ。!」
もぐもぐしながら穂乃果は返す。
「だっておいしいものばっかりなんだもん…もぐもぐ…海未ちゃんも食べる。?」 と言って、穂乃果は笑顔で海未の口元にたこ焼きを差し出す。
「もう穂乃果ったら…」と言いつつ、海未は穂乃果から差し出されたたこ焼きをパクっとほおばって咀嚼する。
「フフッ...、おいしいですね」
海未は穂乃果に笑顔を見せる。
起こったかと思えば笑う…小さい頃からの親友ならではなのだろう。
こうして花火大会に来ると、懐かしい子供時代を思い出す。
穂乃果、海未、ことりは毎年3人で行っていた。近所の夏祭りのことを。
花火をすると思い出す、楽しかった。あの日のことを…もうずっと前の記憶なのに、今となっても忘れることのない大切な記憶…そんな思いが巡る3人であった。
そこへ凛が穂乃果へと尋ねる。
「穂乃果ちゃん食べまくりだけど、今日いくら使ったの…?」
「えーっと…たこ焼き、焼きそば、お好み焼きにチョコバナナに…その他いろいろで3000円くらいかなぁ?」
えー…食べ過ぎだし使い過ぎにゃ…穂乃果ちゃんはお小遣いいくらもらってるの?」
「私は月10,000円だよ。あとそれとは別に学校がある日は、飲み物代とかで毎日500円もらってるよ」
穂乃果は割とお小遣いをもらっている方だろう。
小遣いとは別にもらっている。
ただ、そのほとんどが食費として消えてしまっているのは現実であるが…
そしてやはり気になるのは真姫だろう。
凛が皆を代表するかのように尋ねた。
「ねぇまきちゃんはどうなの??」
「私?私はお小遣いなんてないわよ」
どうやら真姫は、欲しいものや必要なものがあるときに応じてもらっているらしい。
そして学校がある週は、生活費として適当(1~2万)にもらっているとのことであった。
それを聞いた後に、やはり真姫は別次元のお嬢様だと思っていた。
そんな会話をしていると、暗くなった夜空に大きな花火が打ち上がった。
周囲から大きな歓声が上がり、花火大会はスタートした。夏の夜空に打ち上げられる色鮮やかな多数の花火。
夜空に描かれる。一瞬のアートであり、風に乗って漂ってくる。花火独特の匂いが鼻をつく。
宇宙と言う膨大な時間軸の中で、人間と言う一瞬のはかない命が輝くように…美しく一瞬で消えゆく輝きに。多くの人が魅せられていた。
「きれいだねぇ」
「そうですね。美しいですね。…」
感慨深げに花火を見つめ、ことりと海未が誰に言うわけでなくつぶやいた。
2年生3人も夢中で花火を見つめている。
食べるのに忙しかった。穂乃果も、花火を見つめぼそっとつぶやいた。
「花火って私たちみたい…スクールアイドルみたいだよね。…」
限られた時間の中で精一杯輝こうとするスクールアイドル。
輝きはわずかの時間でずっと続くわけではない。だが、そのわずかな時間で輝こうとするからこそ、より美しく、より輝くのである。
だからこそ、その一瞬の時間を大切にしたいと思うのだ。
美しく夜空を彩る花火に、自分たちの姿を重ねる穂乃果だった。
「私は届けたい、この思いをたくさんの人に…大好きな仲間と一緒に…次のラブライブ全力で頑張ろうね。μ‘sicforeverの6人として…」
穂乃果の言葉に全員が大きくうなずいた。
μ‘sicforeverの6人として挑む、最初で最後のラブライブへ向けて、穂乃果とそして全員の気持ちが揺らぐ事は無い。
目指す場所は1つ。μ‘sと同じ場所へこの6人で…穂乃果を始め皆が同じ思いである。
こうしてまた6人での忘れられない思い出を作ったμ‘sicforeverの6人だった。
続く