宮澤 伊織 (著)
紙越空魚は裏側と呼ばれる場所で、 その日死にかけていた。
ある日突然見つけた自分だけの秘密の場所、 そこは 怪異が現れる裏の世界だったのである。
空魚は 気付いた時には動けなくなっており、 次第に水没している草の茂みへと体が沈み込んでいく。
とそこに現れたのは金髪でスタイルの良い美しい少女、 仁科鳥子であった。
鳥子によって助けられた空魚は無事、 元の世界へと戻ることができたのであった。
それから一週間後のこと、 再び空魚の前に鳥子が現れたのである。
通っている大学名以外、 住所はおろか携帯やアドレスも教えていなかったのに、突如目の前に現れた鳥子に狼狽する空魚。
さらにはもう一度一緒に裏世界へ行こうと、もちかけてきたのだ。
最初は渋る空魚であったが、 向こうの世界の特殊な物を売れば、 お金が稼げると聞いて、 再び空魚は鳥子とともに裏世界へと足を踏み入れるのだった。
鳥子には大きな目的があった。
それは裏世界で消えてしまった大切な人を探し見つけることだったのだ。
この物語、裏世界で起こるさまざまな怪異との遭遇に、危険な目に遭いながらも、二人で協力して探検をする女の子二人のサバイバルストーリーである。
ストーリーは白くてくねくねした気持ち悪い怪異が現れる「くねくねハンティング」。
身長八尺( 2m40cm) ある大女、八尺様が現れる「八尺様サバイバル」他2編からなる 連作集である。
まずこの本、 非常に読みやすい。
会話を中心に書かれているので、 内容もすんなりと頭に入ってくる。
物語は空魚目線で全て書かれているので、感情の起伏や思わず呟いてしまう言葉等が、 若者らしく表現されている。
作中に出てくる怪異については、実話会談やネットロアをモチーフにしてあるので、 耳にしたことがある人もいるのではないだろうか。
またそれぞれの怪異について巻末にて解説もしてくれている。
二人の女の子による会話のやり取りもとても面白い。
SF ホラー作品( とはいえホラーの要素は薄いが)として楽しく読める作品であろう。
この作品は SF が読みたい2018の国内ランクで第7位にランクインしている作品ということで興味を持ち読んでみたが面白かった。