当時は気づかなかったけど、母さんの折り紙は特別だった

紙の動物園


紙の動物園

ケン・リュウ著

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ケン・リュウ著

 訳

泣き虫な僕に母さんは折り紙を作ってくれた。

虎や山羊、鹿に水牛。

それらに息を吹き込むと、折り紙は母さんの息を分かち合い、母さんの命をもらって動き出す。

それは母さんの魔法で、小さい頃の僕の友達だった。

10歳になった僕は、英語をしゃべれない母さんが嫌になっていた。

僕は紙の動物を箱に入れ、自分自身から遠ざけた

大学生の時に母さんは病で亡くなった。

そして、子供の時に隠した紙の動物たちは、母さんの死とともに動かなくなっていた。

しかし、それから2年後、僕の相棒だった紙の老虎が動き出し、そこには母さんからの手紙が残されていた…

表題作「紙の動物園」を始め、難民としてやってきた中国人の親子と弁護士の女性を描く「月へ」

アジアと北アメリカをつなぐ海底トンネルの建設史を描いた「太平洋横断海底トンネル小史」、

雨中で事故に遭い、1人脱出ポットで生き残った女性とAI .たどり着いた構成にある惑星で、人類の遥か遠い子孫である1族との出会いを描いた「心智五行」他、「結縄」「愛のアルゴリズム」「文字占い師」の7冊を集めた短編集である。

この作品で初めてケン・リュウの作品を手にしたが、どれも評判通り素晴らしいものだった。

短編の中でも短めの作品が7冊となっているが、どの作品もケン・リュウの魅力が詰まった作品だ。

ファンタジー色の強いものから、SF要素の強いもの、物語の着想や世界の設定、アイディア、そして歴史的背景も含めて、どれもわかりやすくて読みやすい。

ぜひ手に取ってもらいたい作家の1人である。