その後のラブライブ

ラブライブの続きを勝手に考えてみる~EP-012 須臾の梅雨の中で①(76)


ラブライブの続きを勝手に考えてみる~EP-012 須臾の梅雨の中で①(76)

音乃木坂図書室 司書

ラブライブの続きを勝手に考えてみる~EP-012 須臾の梅雨の中で①(76)
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ラブライブ! 2nd Season

ラブライブ! 2nd Season Blu-Rayより

6月上旬

関東地方は梅雨入りしていた。

毎日曇天の空模様であり、梅雨独特の湿度の高い、ジメジメとした肌にまとわりつくような空気である。

今日も朝から雨が降り続く。

雨が降ると、スクールアイドル部はたちまち練習を行う場所がなくなってしまうのである。

彼女たちは基本的に屋上を練習場所にしているのだ。

音乃木坂の校舎は広い。

つまり屋上も広く、一年生を含め4ユニットあるが、スペース的には全然余裕なのである。

だが、雨が降ると屋上での練習はできない。

教室側の部屋で練習できなくもないが、皆の荷物や衣装等が半分以上のスペースを占めており、3人組のRay-OGでさえギリギリといったところなのだ。

つまり練習できる場所がない。

梅雨の時期は昨年に続き、練習場所の確保が大変なのである。

休み時間、教室の窓から外を眺めて穂乃果がつぶやく。

「はぁー…今日も雨かぁ…雨は嫌だねぇ、南さん…」

「そうだねぇ…練習場所困っちゃうねー、高坂さん…」

まるで近所の主婦がぼやくような会話をする穂乃果とことり。

「南さん、私は6月病だよ…はぁー…」

「5月病に続いて6月病ですか…重症ですね、高坂さん…」

勝手に6月病たるものを作り出した穂乃果に、海未がツッコミを入れるように言う。

「6月病ってなんですか。そんなものありませんよ!」

だが海未の言葉にもいつものキレがない。

長いこと雨が続いており、皆、少々気分が塞いでいるのだろう。

「2人とも、何、ぼーっとしてるんですか。次の授業は移動教室ですよ。ほらいきましょう」

海未は穂乃果とことりの背中を押すように言った。

やはり 3人とも引き締まらない気分であった。

そしてその日の放課後…

スクールアイドル部のPC側の教室にはμ‘sicforeverの6人が集まっていた。

隣の教室側の部室ではRay-OGの3人が練習をしているが、他の1年生は雨のため諦めて帰ってしまっていた。

μ‘sicforeverの6人も何をするでもなく、お菓子を食べながらワイワイ賑やかにしているところに、上座の位置に座る花陽が、机に肘をついて手を組み、鋭い目線でぼそっとつぶやいた。

「総員第一種戦闘配置...」

突然、何をわけのわからないことを言い出したのだろうかと、全員が花陽へ振り向く。

だが1人だけ途中で“はっ“と、何かに気づいた表情を浮かべた。

そして立ち上がり、そのまま花陽の横に座ってすっ…と立つ。

「15年ぶりだな」と言うのは花陽の横に立つことりだ。

その言葉に一瞬嬉しそうな顔を見せて花陽が返す。

「あー間違いない。使徒だ」

花陽とことりのやりとりに他のメンバーは理解が追いつかずにポカーンとしている。

「ど、どうしたのよぉ、あんたたち…」と言う真姫。

さらに穂乃果も不思議そうな顔で言う。

「えーっとなんだろう…何かのコントかな…?」そして発狂したように凛が叫ぶ。

「What did you say?わっとでぃじゅせい?」

海未が突っ込む。「英語の苦手な凛が英語で混乱してますよ…」

部屋は変な空気に包まれていた。

花陽のノリに乗ったことりも少し恥ずかしそうな表情をしている。

「なんでことりちゃんしかわからないのマーク!?
伝説のアニメ名シーンなんですけど!この後にシンジ君がね…」

周囲の視線を全く気にすることなく話を続けようとする花陽であったが、遮るようにしてことりが割って入った。

「と、とにかくさぁ、この状況はなんとかしないとまずいよね?」

「まぁそうねぇ…とは言ったものの雨ばかりはしょうがないわよねぇ」真姫が言った。

海未も続く。「そうですね…昨年も同じ問題にぶつかりましたもんね」

そうこれはあぁ昨年μ‘sの時にもぶつかった大きな問題であった。

昨年もこの梅雨の時期、雨が振り続いて1週間練習ができないと言うこともあったのだ。

何とか解決策を模索しようとするものの、体育館は運動部にて、講堂も演劇部等が使用しているので厳しい状況であった。

「やっぱり昨年みたいに雨の時はみんなで協力して衣装作りだったりと、他にやれることをやるしかないよね」

「うん、穂乃果の言う通りなんだけど、学園祭ライブも近いし、μ‘sicforeverの完成度を高めるためにも練習はしたいよね」

真姫の言葉に全員がうなずく。

さらに海未が言う。「練習ができないと穂乃果が太る一方ですからね」

その言葉に反応する穂乃果。

「ちょっと待って海未ちゃん!ひどいよー!」

「少しは現実を見なさい穂乃果。動いてないのに食べてばかりじゃないですか!私は事実を述べただけです」

海未の厳しい叱責に穂乃果は何も言い返せない。

事実、目の前には食べたパンの袋とスナック菓子の袋が散らかっている。

いつものことだが海未の言う通りであった。

結局、昨年と同じ悩みは解消されないままだった。

そんな話し合いの中、花陽が再び暴走を始める。

「雨だけど…逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃだめだー!」

突然大声で叫ぶ花陽に真姫が言う。

「うるさいわよ花陽。何をいきなり…逃げちゃダメって何なのよ。雨だからしょうがないじゃないの!」

某アニメのネタだと言うことを知らない真姫は、真顔で突っ込む。

実は花陽はかなりのアニメ好きだったのである。

小さい頃からアイドルとアニメが大好きだった花陽。

その事実を知っているのは、小さい頃から一緒である凛しかいない。

しかし凛はアニメに全然詳しくないため、花陽が言っている事はほぼ理解できていない。

そんな花陽の発言にことりが再びのかかった。

ことりも実はそれなりにアニメが好きで、それなりに詳しかったのである。

「は…花陽ちゃん…アンビリカルケーブルが切断してるよ…」

その言葉に花陽の目が輝くように反応する。

「な…なんですって!?活動限界まであと3分です…あっ、ちなみになんですってと言うのはミサトさん風です」

とても楽しそうなことりと花陽であった。

少し前に恥ずかしそうにしていたことりはどこへ行ったのやら…

「もしかして先程の続きでしょうかあぁ…」

海未のつぶやきに真姫が答える。

「どうやらそうらしいわね…ミサトさんて誰よ…イミワカンナイ…」

どうやらこの日もおしゃべりをして終わりそうな‘sicforeverの6人であった。

そして花陽の新しい一面を発見した日でもあり、以後、花陽はアイドルオタクとアニメオタクの称号を得るのであった。

続く

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