その後のラブライブ

続きを勝手に考えてみる004新しい日々、君とのライフ①(23)


ラブライブの続きを勝手に考えてみる004新しい日々、君とのライフ①(23)

音乃木坂図書室 司書

4月某日、音乃木坂学院入学式の翌日。

新宿区市谷。

アキバより電車で4駅のこの街は、オフィスや学校が多く点在し、日頃より賑わいを見せている。

おしゃれな飲食店も多く、有名なラーメン店もあったりと、幅広い年齢層の人がこの街には訪れる。

線路に沿って流れる神田川沿いには桜の木が立ち並び、この時期の遊歩道は美しい桜並木が人気であった。

神田川を越えて、少し歩いて坂道を上った先に見えてくるのは砂土原女子短期大学である。

本日この学校では入学式が行われる。

多くの新入生で賑わいを見せる中で、学校の前ではよく見慣れた光景があった。

「にっこにっこにー、はい!」キレの良い声に反応する幼い声。

「にっこにっこにー」 そこにいたのは矢澤家である。

にこの音頭に合わせて、にこにこにーポーズをするにこの妹と弟達。

今日はにこの入学式であった。

矢澤家では家族の門出を祝うイベント等には一家揃って出席するのが恒例である。

3月に音乃木坂を卒業したにこは、新宿区市ヶ谷にある砂土原女子短期大学の保育・育児科へと進学したのだ。

μ'sとしてのアイドル活動も終わりを迎えたにこだったが、卒業後もほぼ毎日のように音の木坂のスクールアイドル部へと通っていた。

それこそ前日も、さも当然かのように。

そんなにこは後輩の隣から“寂しがりやのにこちゃん“と呼ばれ、いじられていた。

だがそれは実際の所、当たっていたのである。

当たり前のような日々が終わって無くなってしまうと言うのはとても寂しいものである。

特ににこの場合は、アイドル研究部として1年生の頃からアイドル活動をしていた。

だが、自分の望む理想が高いが故、周囲はついていけなくなり、やがて1人になってしまったのである。

本気でアイドルに取り組むにことの温度差に、軽い気持ちでやっていた子はついていけなかったのだ。

それでもにこは1人になってもアイドルをあきらめなかった。

そしてμ'sと出会い、大きなチャンスを得て、結果を残し、アイドルとして輝いたのだ。

それどころか、ラブライブで優勝を果たし、一躍有名人となった。

にこはそれが本当に嬉しかった。

だがそれ以上に多くの仲間に恵まれたことがにこにとって1番の喜びだったのである。

一度失ったもの、諦めかけたものを再び手に入れて、充実した日々であった。

だがそれも終わりを迎えてしまった。

失うことの辛さを嫌と言うほど知っていたにこだからこそ、人一倍寂しい思いは強かったのである。

しかし今日から新しい生活がスタートする。

いつまでも寂しいなんて思っていられないとにこは思っていた。

「さすがお姉さまですわ。キレが違いますわね!」

「おねぇちゃーん、アイドルぅぅー」 妹と弟が姉を絶賛する。

すっかり気分を良くするにこであった。

「みんなありがとね。それじゃあお姉ちゃんは先に行ってるから後でママ達と一緒においでね」

そう言って家族より一足先に学校内へと入っていくにこ。

今日のにこはいつにも増して可愛らしかった。

普段からキュートでとても可愛いのだが、今日は服装からメイクに至るまで、いつも以上の可愛さである。

何より変化があったのは髪型であろう。

自身のトレードマークとも言えるツインテールであったが、μ'sが終わり、今日から始まる新しい日々を迎えるにあたって、髪型をストレートにしたのだ。

前日に音乃木坂を訪れた際もツインテールであったが、これはにこニとっての1つのケジメだったのかもしれない。

高校を卒業し、スクールアイドルを、μ'sを終えて新しい日々がやってくる。

にこの中では今までと同じではダメだと言う気持ちがあったのである。

そんなに子であるが童顔であるため、どうしても幼く見えてしまう。

絵里と希とは同じ歳には見えないし、スタイルと言う面で言えば2人には遠く及ばない。

それでもかわいらしさと言う点では2人にも負けていない。

実際にμ'sの中でもその可愛らしさと独特のキャラで誰にも負けない位の人気があったのだ。

そんなにこは、この春から保育士になるために、砂土原女子短期大学へと入学したのである。

誰からしてもにこのこの選択は意外であった。

今の世の中は多様化の時代である。

それは学校にも言えることで、アーティストやクリエイターを育てる専門学校もあり、μ'sのメンバーはにこがそういう進路を選ぶものだと思っていた。

決してアイドルから離れる事は無い、と。

だがにこの選択は保育士の道であった。

だがそれはにこ本人からしてみれば、当然の選択であった。

にこは少し歳の離れた妹と弟がおり、小さい頃から面倒を見ていたこともあって、小さい子供が大好きなのである。

もちろん、常にアイドルになりたいと言う思いはあるが、子供が好きなにこは進路を決めるときに、さほど迷うこともなくこの道へと進んだのである。

「私は宇宙№1のアイドル先生になるわ…フフフッ…」

1人で声を出して謎の宣言をするにこ。

少し言っていることの意味がわからないが、新しい生活に向けて、やる気に満ちていることには違いない。

μ'sとしてのアイドル活動は終了したとは言え、やはりアイドルが好きなことには変わりのないにこであった。

そんなにこの知名度は、ここの短大においてもすごいものだった。

ツインテールを止やめて、化粧もし、今までと雰囲気も変わっているのだが、あっという間にμ'sの矢澤にこと言うことがばれてしまい、多くの人に囲まれてしまっていた。

だがにこも悪い気はしない(と言うより良い気分で嬉しい)し、性格的な所もあって、自分から積極的にノリノリで周囲を巻き込んで、にこにーポーズを始めたのである。

さらには自ら先導を切って、周囲の人全員を集めて、記念写真を撮り始める始末である。

こういうときのにこのリーダーシップとでも言うのだろうか、この行動力はさすがである。

軽い感じのノリで周囲とコミニュケーションを取るにこであったが、実は内心では新しい生活のスタートに多少の不安を感じていた。

その行動からは想像もできないが、誰もが新しい環境に飛び込むときは期待と不安でいっぱいだろう。

にこもそうだった。

だがにこにとって大きかったのは音乃木坂のクラスメートが1人、同じ学校に入学していたことである。

その後入学式も終わり、帰りに寄り道をするため家族とは別々に帰宅するにこ。 学校から歩いて近いという事もあり、帰りに隣駅の飯田橋、神楽坂に寄っていくつもりであった。

何でも、新しくアイドルショップができたという情報を入手しており、アイドルを愛するにこにとしては行かないわけにはいかないだろう。

学校を後にし、市ヶ谷駅とは逆の方向へと、歩いていくにこ。

神田川沿いの美しく咲き誇る桜により、いっそう気分も良くなっていた。

そんなにこの背後からこっそりと忍び寄る影があった。

続く

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