チャールズ・L. ハーネス著 中村 融訳
2177年、アメリカ帝国。
その男は自分が何者か知らない。
彼の名はアラール。
盗賊結社に属し、盗賊として百万の富を奪い、その金を使い奴隷の解放をしている。
彼は三十歳ぐらいの青年で、川辺をさまよっているところを教授に保護された。
様々なテストの結果、彼の記憶喪失は完全なものであり、過去を示すものは何一つ不明だった。
そしてアラームは昼は天体物理学の教授となり、夜は盗賊となったのである。
アラームはシェイ伯爵という権力者の館に忍び込み、宝石を盗むことに成功するが脱出に手間取ってしまう。
なんとか仲間の協力により脱出するが、事態は大変なことになる。
シェイはアメリカ帝国宰相のヘイズと会談し、アラールが危険人物であると判断する。
そして保安大臣のターモンドによってアラールは襲撃を受けてしまう。
仲間は死に、スタッフは売られてしまった。
そんな中でアラールはケイリスという女性に出会う。
その女性に命を救われ、初めて会ったにも関わらず、記憶を揺さぶられるアラール。
彼はなぜ帝国が自分を殺そうと躍起となるのか理解できなかった。
だが、謎の全てはアラールという存在にあったのである。
この作品は今から70年近く前に刊行されたものだが、古めかしさは微塵も感じない。
正直ワイドスクリーンバロックというのが、何なのかいまいちわからないが、そこはあとがき等を参照にしてもらいたい。
物語も最初は少し意味が分からないかもしれないので、読み直すことをおすすめしたい。
そうすると複雑怪奇な物語の中身がよく見えてくるだろう。
光速を超えるとどうなるか...それがアラールの正体。
物語の核となるものである。