杉井 光 (著)
女装して演奏動画をネットに上げる。
それは単に注目を集めて再生回数を稼ぐためだった。
ただのアマチュア中学生の村瀬真琴は男と名乗りつつ、Musa男というネームで活動を続けているうちに、気づけばかなりの視聴者を獲得していた。
そして高校生になり選択科目で音楽を選択するが、何気なくピアノで弾いた曲がMusa男の曲だと音楽教師の華園先生にばれてしまう。
言い訳をするが真琴がMusa男であることを見抜かれ、正体をバラさない代わりに条件を突きつけられる。
それは先生のアシスタント(と言うか使いパシリ)みたいなものだった。
授業で使う曲の編曲や、音楽準備室の片付けなどであり、こうして真琴は音楽室へ通うのが日課となる。
ある日自分以外にもお手伝いがいることを知る。
冴島凛子という少女でかつて天才ピアニストとして各地のコンクールで賞を総なめにした一年生であった。
更には華道の家元に生まれ育ったドラム少女の百合坂詩月、不登校で何の楽器でもハイレベルでこなす宮藤朱音という少女たちと出会っていく。
女装動画と華園先生がきっかけで、真琴はやがて彼女たちと一つのものを形にしていく。
音楽に情熱を捧げる少年少女のストーリーである。
この作品を読んで音楽っていいなぁと、音楽をまたやりたいと思った。
自分も若かりし頃、音楽、楽器、バンドに明け暮れていたので、あの頃の熱い想いが蘇る気分だった。
作品としてキャラの会話や話し方も特徴が際立っており、特に凛子の毒舌は痛快であり、非常に親しみやすい。
またライブや楽器の演奏シーンは臨場感が読んでいてとてもよく伝わってくる。
ただし音楽用語が多数使われており、音楽をやっていない人には分かりづらいかなと思うところも多々あるなと感じた。
だがこの四人がともに音を重ねて一つになっていく姿には、感動に近いものがあり青春音楽ストーリーとして多くの人に読んでもらいたい作品だ。