小川晴央(著)
ーアマザクラー
それは空から桜の花びらが降る不可解な現象である。
東やアジア圏内にある数10カ所の特定地域でのみ観測されていて、観光資源ともなっている。
海に面する小さな町、九重町もアマザクラ現象が頻繁に見られる街で、ピンクや黒のアマザクラが降っていた。
そのアマザクラの秘密を神屋敷ツバサと言う少女は知っていた。
幼なじみである環木ヒヨリの心とリンクしていると言うこと。
ヒヨリが喜ぶとピンク色、悲しむと黒色のアマザクラが降るのであった。
ツバサにとってヒヨリは特別で大切な存在だった。
しかし2人は、ある事件を機に疎遠となってしまう。
その事件より数年が経ち、同じ高校に通う2人はすれ違う毎日。
ツバサはヒヨリとの距離が決定的に離れる前、もう戻れない、でも大切な何気ない日々の記憶に今も縋りついていた。
そんなある日、2人の前に紫々吹ルカと言う転校生がやってくる。
彼女の父は写真館でアマザクラをとっており、父とともにアマザクラの降るこの街にやってきたのだ。
アマザクラの秘密を知っているのは、自分だけ…そう思う。
ツバサの前にバイクに乗った女性が現れ、アマザクラの秘密を知っているなと迫られる。
身の危険を感じたツバサだったが、そこに通り掛かったルカに助けられる。
そのルカはツバサに友達になってほしいと言う。
ルカには目的があった。
アマザクラの真相を探ると言う。
そのため、ツバサに接近したのであった。
この出会いが止まっていたツバサとヒヨリの時間を再び動かしたのである。
アマザクラの真相は…これはそれぞれの想いを胸に秘めた少女たちの物語である。
この作品はとても心が温かくなる内容である。
すれ違ったままの2人。
でも2人とも、心の中ではお互いのことを大切にしていて、少しずつその距離感を取り戻していく友情の物語だ。
傷つく時もあるし、苦しくて悲しい時もある。
でもそれらを抱えて乗り越えることで強くなっていく。
友情っていいなと思える作品だし、アマザクラと言う不可思議な現象の模写のイメージしやすく、とても良い作品だと思う