いつまでも物語の世界の中にいたい

オリンポスの郵便ポスト


オリンポスの郵便ポスト

藻野 多摩夫 (著), いぬまち (イラスト)

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藻野 多摩夫 (著)

舞台は近未来の火星。

人類は地球から火星へと入植していた。

人が住める環境にテラフォーミングするために最初に送り込まれた人々はレイバーと呼ばれた。

レイバーとは改造人間である。

火星の過酷な環境では、あまりにも人類は脆かったのであった。

こうして生まれたのがサイボーグと化した人間、 レイバーである。

そしてテラフォーミングを終え多くの人類が火星移住する。

だが人類はまたしても同じ過ちを犯してしまうのであった。

大規模の内戦が勃発し、 多くの者が死に、街は破壊されてしまう。

そんな戦場には、多くのレバー等も兵士として駆り出されたのであった。

そして現在... 火星は再び荒廃していた。

かろうじて人類が生存できる環境ではあるが、 食料も少なく、 人口も減少していた。

災害や内戦により年は寸断され、 通信手段は手紙のみとなっていた。

そんな環境の中で、長距離ポストマンとして働く少女がいた。

少女の名は、エリス。

とある日彼女の前に現れたのは 現在ではその存在すら希少なレイバー、 クロであった。

クロ の依頼はオリンポスの郵便ポストまで自身を届けるという内容であった。

オリンポスー、 そこは火星で最も天国に近い場所と呼ばれ、 そこのポストに出された手紙は誰にでも届けてくれるという伝説があった。

それがたとえ遠く離れた地球や天国であったとしても...

クロは自身の死に場所を求め、 エリスはポストマンとして多くの思いを抱いて、

こうしてエリストレーダーの黒のオリンポスの郵便 ポストを目指した果てしない旅路が始まるのであった。

お互いに悲しい過去を持つクロとエリスの二人は、 長い旅の中で少しずつ心を開いていく。

最初は会話でさえ、 ぎこちなかった二人の距離が縮まり、 そして互いの過去がつながったときには思わず胸が熱くなるものを感じる。

目的地にたどり着いたとき、 二人を待ち受ける運命には言葉で言い表せないような感慨深いものがある。

帯の通りいつまでもこの物語の中にいたいと思える作品だ。

今回のオリンポスの郵便ポストは、 SF が読みたい2017のサブジャンル別、 ライトノベル SF 部門で一位。

電撃文庫の小説大賞選考委員奨励賞の作品でとても良い作品だった。