グレッグ・イーガン著 山岸真 訳
表題作をはじめとする9作品を収めた短編集である。
グレッグイーガンと言えば初心者にはいささかきついハードSF作家というイメージである。
実際今作に収められているどの作品にしても、アイデアのすごさはもちろんのこと、物理学や数学、科学や医学に量子力学、また文化や宗教等の価値観社会における様々な問題などを含んだ作品となっており、イーガンの知識の深さには思わず唸るほどである。
だがしかし、それぞれに対して説明があるわけでもないため、読んでいて難解であったり理解できないところも多々出てきてしまう。
この日本オリジナル短編集は、そんなイーガン作品の中でも読みやすい作品を集めたとのこと。
とはいうものの、それでもいまいち内容が頭に入ってこなかったり理解できない話や終わり方が...と感じる作品も多かった。
個人的にはチェルノブイリの聖母という作品が、タイトルからだと小難しい雰囲気はあるが、比較的に読みやすいと感じたし、兄弟作幸せの理由と本読んで内容を理解できたものの、作品全体を通してとなると、やはりわかりずらいという印象である。
今作には事故で脳だけ助かった夫を助けようとする妻の姿を描いた、「適切な愛」や近未来の人類を描き、量子サッカーに興ずる「ボーダー・ガード」等々、表題作以外にも多くの受賞及び受賞候補になった作品が並ぶ。
SF好きなら一度は読んでみる価値はある作品であろう。