全力のSF愛を捧げて編んだ傑作アンソロジー

日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙


日本SFの臨界点[恋愛篇] 死んだ恋人からの手紙

伴名著氏による選

image
伴名著氏による選

入手困難な短編を集めたアンソロジー

地球の女性のもとに遥か遠くの宇宙にいる恋人から、今の状況を伝える手紙が何通も届く。

しかし届く順番はめちゃめちゃで、恋人は既に死んでいたのだ。

その手紙には異星人の思考について書かれていた。

中井紀夫による表題作「死んだ恋人からの手紙」。

ソ連が存在した時代、東欧の小国・ロベリア共和国の超能力者が住む街へ調査に向かう男を描く藤田雅矢「奇跡の医師」。

老人が少しずつ死ぬと、子供が少しずつ生まれると言う世界の家族を描いた和田毅「生まれ来るもの、死にゆく者」、

売れないラノベ作家の現在に過去、15年前に別れた少女がその当時の姿で現れる大樹連司「劇画・セカイ系」

中世から電話が存在する世界を描いた歴史改変物語、高野史緒「G線上のアリア」、

近未来のAIが溢れる京都でストリートミュージシャンの少女と京大工学部の少女が出会い繰り広げられるガールミーツガール、

扇智史「アトラクトの奏でる音楽」

人生で人はどれだけ信号待ちをするのか、信号待ちをする男女に奇妙な現象が起こる、人の一生を描いた「人生信号待ち」

数字にまつわる共感覚を持つ少女を描く円城塔「ムーンシャイン」

求婚の条件に月を要求し、技術開発が始まる新城カズマ「月を買ったご婦人」の9作品を集めた短編集である。

アンソロジーと言うことで普段あまり読まない短編に手を出してみました。

恋愛編と言う事だけど、恋愛かな?と思う作品もいくつかあるが、恋愛にもいろいろな形があるし、全体的に良い作品ばかりだったので、そこはよしと言う感じである。

とは言え、やはり短編は好みが分かれる作品が多い。

この作品も面白いもの、思わずうなずいてしまうものもあるし、いまいち理解しづらいものもあった。

しかし他の書籍には一切収録されてない作品ばかりなので買う価値のある作品だと思う。