自由を奪われ、猟犬になる

ハンターズ・ラン


ハンターズ・ラン

ジョージ R R マーティン (著), ガードナー ドゾワ (著), ダニエル エイブラハム (著)

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ジョージ R R マーティン (著), ガードナー ドゾワ (著), ダニエル エイブラハム (著)

 酒井 昭伸 (訳)

植民星サン・パウロにて探鉱師を営むラモン。

性格は荒々しく、特に酒が入ると喧嘩っぽくなってしまう男である。

ある日のこと馴染みの酒場エル・レイにて酒を嗜んでいた時に、喧嘩になってしまい、ラモンは相手の男を殺してしまったのだった。

しかもまずいことに相手はエウロパ星の大使だったのだ。

ことが発覚し、捕まりでもしたら死罪は免れない。

酒場の店主は何も見なかったと、ラモンに逃げるように促す。

酒場から逃げ去ったラモンは、ほとぼりが冷めるまで、仕事の探鉱も兼ねて、北部の山間に身を隠すことにする。

だがそこで遭遇したのは、見たこともない不気味な異種属生命体だった。

バンを破壊され、逃げる裏門であったが異種族の攻撃を受け気を失ってしまう。

目覚めた時には囚われの身になっており、首には肉でできた紐を突き刺され自由を奪われていた。

異種族がラモンに要求したのは、脱走した人間を捉えるためのハンターとなることであった。

従わざるを得なかったラモンはマネックという名の異種族と共に、逃亡した人間を狩るため、冒険へ旅立つことになる。

最初はマネックの言っていることが, まともに理解できずに、どうやって異種族を殺して逃げるかだけを考え、逃亡者が少しでも逃げられるよう時間を稼いでいたラモンであったが、マネックと共に行動しているうちに次第に考えが変わっていく。

そして自分についての驚愕の真実、迫っている人間の正体を知ることになるのだった。

そして迫っていた人間に遭遇したラモン。

彼の選択肢は二つ。 一つはこの人間を殺すこと、それが自分にとって最良の選択の一つであった。

そしてもう一つはともに逃げることであった。

ラモンは後者を選択し、異種族の元を離れ、人間と逃げることになったのだが...

果たしてその選択は正しかったのだろうか、そしてその先に待ち受けるラモンの運命は...

この作品はガードナー・ドゾワが構想を立て、マーティンが加わり二人で加筆、そしてエイブラハムが加わり足かけ30年以上かけて完成した作品である。

一言で言うならば、とにかく面白い作品だ。

性格も言葉遣いも荒いラモンが、真実を知っていく過程で、共に行動する異種属のマネックとの間に、不思議な友情が芽生えたり、共に逃げる事になった人間との奇妙な関係であったりと、話が進むにつれて、元々のラモンとは別人になっていくかのような模写に飲み込まれてしまった。

マネックが使う言葉で「タテクレウデ」「アウブレ」等々と言った、意味のわからない言葉が度々出てくるが、読み進めていく中で、ラモンの台詞や心情から、なんとなくその意味を感じ取ることができる。

最後の結末まで気が抜けることなく、読める面白いSF作品である。

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