最高のファンタジー

十二国記 月の影影の海


十二国記 月の影影の海

小野 不由美(著)

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小野 不由美(著)

陽子は真面目でおとなしい性格のごく普通の女子高校生である。

だが突然その日常は一変する。

陽子の目の前にケイキと名乗る謎の男が現れ、許すと言う誓約をさせ、敵から逃げると言い、陽子を連れ去ったのだ。

そして告げられたのは陽子はケイキの主だと言うことであった。

訳も分からずに連れされ去られ辿りついた場所は十二国の巧国と言う国だったが、途中で敵に襲撃されケイキたちと離れてしまい、陽子は一人でさまようことになってしまう。

そしてこの世界で会った人に、この世界のことを教えられ、国の外海は虚海と呼ばれ、外へ(元の世界)は帰れないと言うことと、自身は外から来た人間で海客と呼ばれていることを知る。

陽子は自分が海客と言う理由で、出会った人に裏切られ、誰も信じられなくなっていた。

手元にあるケイキから譲り受けた剣を手に、あてもなく彷徨続け、襲ってくる妖魔や獣との戦いで疲弊し力尽きそうになっていた。

だがそんな陽子を救ったのは半獣姿の人間、楽俊であった。

半信半疑の陽子だったが自分を助けてくれた楽俊とともに旅をすることになり少しずつ陽子は信じられるようになっていく。

そしてたどりついた雁国で出会ったのは雁の国王の延であった。陽子はどうして異世界へ来ることになったのかと言う真実を知ることになるのであった…

これは素晴らしいファンタジー作品だろう。

異世界の設定、そこに登場する人物、妖魔、獣、見知らぬ世界に絶望するも、生きるために戦う陽子の姿であったりと、どうしてもっと早くこの作品に出会えなかったのだろう。

蝕や夜に襲ってくる妖魔は、漫画「ベルセルク」を彷彿とさせた。

陽子は常に帰りたいと願いながら行動をするが、真実を知り、次第に自分の使命に立ち向かっていこうとするのと同時に、自他共に関わり合うことで成長していく姿が見て取れる。

この作品は十二国と言う異世界を描いた傑作である。

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