草野 原々 (著)
表題作をはじめ、 「エボリューションガールズ」、「 暗黒声優」の全3作による短編集。
ハヤカワ SF コンテスト特別賞、星雲賞を受賞した「最後にして最初のアイドル」。
アイドルを目指して活動する女性 古月みかは、挫折しプライドをも失い自殺をしてしまう。
だが、この死は終わりではなく始まりであった。
友人であり 医者の娘で、 自身も医学部に通う新園真織によって、みかの脳と脊髄は冷凍保存され、マオリはミカを生き返らせるための研究を続ける。
それから数十年の歳月を経てみかは蘇るのである。
しかしその姿は、 人間ではなく異形の姿であった。
さらにこの数十年の間に、世界は滅亡寸前となっていた。
その世界で二人は、アイドル活動を続けるのだが、それは普通の活動ではなく、 食料として生き残っている人間を食うというものであった。
やがて地球には人類がいなくなり、みかはアイドル活動を続けるため、また自分のファンとなる存在を求めて進化を繰り返しながら宇宙へと進出していくのである。
「エボリューションガールズ」 生物による擬人化ゲームにはまった洋子は歩きスマホでゲームをしていた時に、事故に遭い死んでしまう。
しかし目を覚ます洋子であったが、 なんとアメーバへと転生をしていたのだ。
しかも転生した世界は、自分がハマっていたりソシャゲのような世界であり、ガチャを回して身体や器官を獲得し進化していくのだった。
洋子は生き残るため、 そしてまだ見ぬ最上位ガチャを求め進化し、 出会った仲間と旅立つのであった。
「暗黒声優」 最強の声優になるべく他の声優の発生管を奪うあかねであったが、その前に暗黒声優が現れ戦いとなる。
二人の戦いが終わった直後、異変が起きる。
地球の重力がすべて失われ、 それに伴い地球は大災害に襲われ、 一瞬で人類は滅び、地球は消滅してしまう。
かろうじて地球から脱出した茜は、 暗黒声優との戦いにケリをつけるべく、 宇宙を追いかけ回すことになる。
木星へ、さらにその先へ、 そして太陽系を出て、まだ見ぬその先へと冒険をするスペースオペラである。
この作品読んだ瞬間にアニメ好きな人なら気付く人が多いだろう。
最後にして最初のアイドルはラブライブを元にした二次創作だ。
登場する二人の女の子の設定は、思い切りラブライブの矢澤にこと西木野真姫のパクリである。
喋り方の特徴や設定( 医者の娘で金持ち等)、それ以外にラブライブを連想させる表現が多々見られる。
「エボリューションガールズ」も、けものフレンズをモチーフにしているのがすぐにわかる。
ストーリーとしては現代の流行とも言える、 スマホソシャゲ、 アニメ、 アイドル、 声優など、 おたくの分野ともいえるものをモチーフにし、そこに SF としてのスパイスを加えた作品である。
天文学 や地質学と随所に知識の片鱗も窺え、 十分に SF 作品と言えるだろう。
しかし賛否両論、 厳しい辛辣な意見も多い作品である。
個人的には暗黒声優は内容的にも面白いと思ったが、 表題作に限っては別の全く違う作品であるとはいえ、 元ネタのイメージにも関わりかねないので否である。