音乃木坂図書室 司書
穂乃果の家で新しい曲の衣装作りをみんなでやり、家に帰り帰宅したことり。
夕飯を終えた後、音乃木坂の理事長を務める母にお願いをすることりの姿があった。
そう、連日のように打ち合わせをしていた雨対策についてである。
「ねえお母さん。スクールアイドル部の部室を拡張してもらえないかなぁー」
「それは申請内容にもよるけど、どうしてかしら?理由を教えてもらえる?」
「スクールアイドル部って屋上を練習場所にしてるでしょ。だからこの時期とか雨が降ると全然練習ができなくなっちゃうの。
実際雨のせいで1週間練習できてないし…だから空き教室を部室として使わせてもらえないかなと思って」
「なるほどね、確かにずっと雨が続いてるもんね。ちなみにスクールアイドル部って今何人の部員がいるの?」
「私たちが6人、一年生が15人で、全部員で21人だよ、ユニットは全部で4つ」
「そっか、すごい増えたわね、最初は3人だったのに、今は21人か…うんわかった、検討してみるわね。
でも絶対とは言えないわよ。他の先生たちの承諾も必要だから。まずは申請書を提出してもらえる?」
「うん、ありがとうお母さん」ことりは理事長である母に、部室拡張を直談判していた。
これだけ雨の日が続いてしまっている中で、1日でも早くなんとかしたいと思い頼んだのである。
また、ことりの母も自分の娘がいるとかは関係な、くμ‘sの時からスクールアイドルを応援していた。
何とかしてあげたいと言う思いはきっとあったのだろう。
それから数日後の放課後の事…
梅雨の中晴れとでも言うのだろうか、連日降り続いていた雨が、嘘かのようにこの日は晴天が広がっていた。
久しぶりに屋上にて練習に励むスクールアイドル部。
中でもμ‘sicforeverの6人は気合十分の海未のもと、ハードなトレーニングを行っていた。
入念なストレッチに、筋トレメニュー、そして振り付けの練習と、ここ数日の鬱憤を晴らすかのようなメニューだが、誰1人として文句を言うものはいない。
それだけこの接点は皆が望んでいたものであり、生き生きとした表情で練習を行う6人であった。
ある程度の練習を行い、しばしの休憩をとっている時のことだった。
屋上にヒールの音が鳴り響く。6人の元を訪れたのは理事長だった。
その姿に気づいたことりが声をかける。
「あれ、どうしたのお母さん?」 ことりの問いかけに理事長は答える。
「練習中にごめんね。スクールアイドル部の様子を少し見てみようと思って」
音乃木坂の屋上は広い。
それぞれのユニットが、お互いに邪魔にならないよう、離れた場所にて練習を行っている。
μ‘sicforeverの6人は今休憩中であるが、一年生の3ユニットは練習中である。
理事長は練習に励む1年生の姿を遠くから眺めていた。
そしてしばらくして納得したような表情で、再びことりに話しかける。
「はい、これ鍵ね。この前ことりに頼まれた部室拡張の件だけど、正式な要望として、他の先生たちからも承諾もら得たから渡しておくわね。
戸締りはしっかりするのよ。あと学校内では理事長って言う事、わかったわね?」
「本当に?うわぁー、ありがとうお母さん!」
「だから…まぁいいわ…じゃぁ練習がんばってね」
といって理事長は、ことりに鍵を渡すと屋上を去っていった。
その姿は生徒を見守る優しい理事長の姿だった。
ことりと理事長のやりとりを離れた場所で見ていた後に、穂乃果がことりに声をかける。
「ことりちゃん、理事長どうしたの?何かあったの?」
その言葉を聞いて、ことりは受け取った鍵をみせびらかすようにして笑顔で言う。
「みんなっ、部室が増えたよ!隣の空き教室をスクールアイドル部の部室として使えることになったの。
これで雨の日でも前よりは何とかなるね。よかった」
「本当に!?あぁ、やったね!さすが理事長はことりちゃんのお母さんなだけあるね。よし、これで少しは問題解決だ!」
「私のお母さんが理事長だっていうのが関係あるのかはわからないけど…部としての申請が通ったってことだね。もっと早くに申請しておけばよかったね」
と言ってことりは穂乃果とともにじーっと花陽を見つめる。
「すいません、私が忘れていたばかりに…でもこれで雨の日でも前よりは何とかなりそうなのでよかったです」
花陽は少し申し訳なさそうに言った。
確かに以前にも物質が狭いから部室拡張申請の話は出ていた。
だが花陽1人の責任ではない。
全員が忘れていたのだから。
「では練習が終わったら行ってみましょう」
海未の言葉にみんながうなずき再び練習に戻る6人であった。
結局この日は日が暮れるまで、みっちりと練習を行ったμ‘sicforeverの6人だった。
そして練習後…部室で着替えて帰り自宅までした後、新しくもらった部室の教室へ行ってみると…
使っていない机や椅子はそのままになっていて全体的にうっすらと埃が浮いている。
近年は年々と生徒数が減少していたせいだろう。
この教室も使われなくなってから、それなりの時間が経っているのだ。
とてもじゃないがこのまま部室として使うには不適切な状態である。
「あちゃー、これは片付けとお掃除が大変だねぇ…」と言ったのはことりである。
「汚いわねぇ…」と言う真姫はマスクを装着し箒を手にしている。
「倒しがいがありますね!」と言う海未はモップに洗剤を装備している。
「大掃除にゃー!」と言う凛は、バケツに雑巾を手に、やる気満々といった様子の3人である。それを見て花陽が言う。
「えっ、今から掃除するの…?もう19時だよ…?」
この日は久しぶりの晴天であり、かなり遅くまで練習を行っていたのだ。
時刻は19時を回っており、本来ならもう下校していないといけない時間である。
そこへ穂乃果が加わる。
「また今度にしようよ…私お腹すいてもう無理…」
と言うのを見計らったかのように、穂乃果のお腹から“グゥー“と言う大きな音が鳴り響く。
それを聞いて全員が笑う。
「穂乃果のタイマーは本当に正確だよね。でも確かに今日はたくさん練習したからお腹すいたわね」真姫が言った。
「そうですね。それにあまり遅くまで残っていたら先生に怒られてしまいますし、また今度にしましょう」
海未も言った。とにかくこうして部室を新たに入手したスクールアイドルであった。
ひとまず抱えていた問題を、少し解決した6人。
帰路につく6人。みんなで校門をくぐって下校する姿は、μ‘s時代と変わることのない仲睦まじい姿であった。
続く