音乃木坂図書室 司書
海未のキャラ変にざわつき、大歓声となった会場に向けて海未が言う。
「大変失礼しました。違う園田海未が出てきてしまいました。
自己紹介は学年ごとにさせていただきます。では次の曲にまいりましょう」
すっかりいつも通りの口調に戻った海未は次の曲ふりをして、さらに続ける。
「μ‘sが3人でスタートしたときの最初の曲、そしてラブライブでの思い出の曲…スタートダッシュ夢の扉2曲お聞きください」
そういったμ‘sの国はそれぞれのポジションでポージングする。
一瞬静まる会場…全員が見つめる中、曲が流れ出すと同時に大歓声顔沸き起こった。
スタートダッシュ/詩
この曲があったからこそ今のμ‘sがあるμ‘sの原点ともいえる曲である。
穂乃果ことり海未の3人でスタートしたμ‘s。曲も作れないような中でμ‘sの活動を始めて、そんな3人が西木野真姫と言う存在に出会い、誕生した曲である。
海未の描いた詩。 ”産毛のことりたちもいつか空に羽ばたく”と言うのは、これからスクールアイドルとして飛び出そうとしている自分たちの姿を現したかのようである。
この曲で3人で初ライブをやった。その時その場に家合わせた9人がμ‘sのメンバーになるなんて、誰も想像すらしていなかっただろうだが、この曲でのライブがあったから、今こうしてμ‘sの9人がいるのだ。
μ‘sのメンバーにとってはもちろんのこと、μ‘sに関わる全ての人にとって、この曲は大切で思い出深いものであることに間違いないだろう。
夢の扉/歌詞
第二回ラブライブ東京予選において最終予選へと進出するべく、μ‘sはこの曲を用意した。
だがこの曲が完成するまでの道のりは決して平坦ではなかった。
μ‘sにおいて数多くの衣装、作曲作詞を担当してきたことり、真姫海未の3人がそれぞれ壁にぶつかっていたのだ。
より良いものを、ラブライブで勝ち残れるようにと言う思いが強すぎたのだろう。
それが逆にプレッシャーとなり、3人は悩んでいた。
それを解消するために合宿を行い、グループを組んでみんなで協力し絆を深めたことによって、誕生した曲がこの夢の扉なのである。
曲、詞、衣装どれもがすべて素晴らしいものが、9人によって生まれたのだ。
夢の扉…それはμ‘sの9人にとってはラブライブと言う舞台であった。
その舞台にたどり着くためにμ‘sの9人がPR動画を撮影した場所…そこはA– RISEの通うUTX高校、屋上庭園だった。
A– RISEのツバサに誘われたというのが最大の理由であったが、A– RISEに負けたくない、そう思っていたμ‘sの9人は自分たちの目指すべき存在のA– RISEと同じ舞台でPR動画を撮ることにしたのであった。
そしてその結果はもはや言うまでもなく、皆が知っている通りである。
この曲もまた、μ‘sの国にとって思い出のたくさん詰まった曲なのだ。2曲を立て続けに披露したμ‘sの9人は再びMCへと入る。
今度はOG 3人の出番である。
「Yeah!、μ‘sだよー!みんな盛り上がってる?」 会場を煽るように言ったのはにこである。
それに応えて会場からは大きな声が返ってくる。
BiBiのリーダーとして、そしてμ‘sでも盛り上げ役(兼いじられ役)として、にこの存在はこの上なく大きいのだ。
「それじゃあ私たち音乃木坂OGも自己紹介させてもらうわよ!まずは私からね。
にっこにっこにー!元音乃木坂のスーパーアイドルにして宇宙№1アイドル、あなたの永遠のアイドル、世界の矢沢こと矢沢ラブにこにーだよ。
えっとにこはアイドルが大好きなんだけど、私を応援してくれるみんなのことがもっと大好きなの。
今はBiBiって言うユニットでリーダーもやってるんだけど、これからもみんなの笑顔のために頑張るからよろしくね。
あなたのハートにラブにこっ!」
いかにもにこらしい、あざとさ全開の自己紹介である。
普段BiBiであれば、ここで真姫が激しいツッコミを入れて、にこ真姫劇場へと発展していくのだが、今はμ‘sである。真姫もおとなしく我慢して言葉を控えていたのだ。
だがその表情からは何かを言いたくてしょうがないというのがうかがえる。
「それでね、今日はこうして久しぶりにμ‘sとしてライブしてるんだけど、やっぱりμ‘sだと、より一層私の良さが際立つっていうかもうみんなも分かってると思うけど、宇宙ナンバーワンのアイドルである私がいるってだけで、μ‘sのエトセトラたちも輝くってわけよね。
それは私の存在があってのことで、一番は私がいるってことが重要なのよね。つまりね…」
相変わらず長い強い自己主張の激しいにこである。
だがさすがのにこまき劇場になろうかと言うところで、ナイスタイミングである。
「もう、うるさいわね、にこは! 1人で長いのよ。ペラペラと。少し黙ってなさいよわかった!?」
そんな絵里の言葉を聞いてにこはつぶやく。
「こわっ…絵里恐っは…鬼ババァね…」
「誰が鬼ババァですって!?ねぇ、真姫、にこを黙らせておいて!
はぁ、もう…と言うことで皆さんうちの矢沢が調子乗ってすいません…
では挨拶の続きを…気を取り直して、それじゃあみんないい?行くわよ、せーの!かしこい、かわいい…」
絵里の声に続いて会場からは大きな声が返ってくる。
「えりーちかー!」
これはいつぞやのライブで誕生した絵里と会場との掛け合いであり、気がつけば今では定番のコール&レスポンスである。
「どうもありがとうございます。駿女1年μ‘sとBiBiでお馴染みの綾瀬絵里です。よろしくね!」
会場が沸く。高校時代からさらに背も伸び、まるでモデルかのような美しいスタイルとルックスに絵里のファンは多いのだ。
そんな絵里を見て、再びにこがぶつぶつ言いだす。
「絵里ってば、毎度毎度そのコラボは何よ。うらやましいじゃないのよ。
私にもニコニーコラボやらせなさいよ!よーし行くわよー、にっこに...ぐぇぇぇ...!?」
にこがそのまま会場ににこにこにーを強要しようとした瞬間、背後から希の強烈なワシワシマックスが炸裂し、その威力ににこは大声を上げて悶絶した。
「はーいみんなうちやで。行くよー!希パワー注入、はーい、ぶしゅっ!駿女1年スピリチュアルパワー全開の東條希です。みんなよろしくね!」
希も同じくいつぞやのライブで生まれたこの掛け合いが、いつの日からか定番となっていた意味はよくわからないが、希の声に合わせてみんなでぶしゅっ!と言うのである。
「の…希…あんたよくもやってくれたわね…!」
そんなにこを無視して希は会場に向けて言う。
「次の曲は音乃木坂の学園祭でしかやってない曲なんだよね。ノリの良い曲やから、みんなノリノリでついてきてなあ!」
「ていうかあんたたち、何楽しそうに会場と盛り上がってんのよ!」
そういうにこを無視して絵里が言う。
「あと、その次も夏にぴったりの曲だから、みんな一緒に踊ってね!」
「きぃぃぃー、2人とも無視してんじゃないわよ!さっきから何なのよ!」
と言うにこの叫びもむなしく、無視して進める絵里と希だった。
会場は常に笑いに包まれていた。
やはりにこと言う存在感はμ‘sにおいても飛び抜けていた。
続く