他民族を豚と呼ぶ世界

86―エイティシックス―


86―エイティシックス―

安里 アサト (著), しらび (イラスト)

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安里 アサト (著)

似たような世界が現実にあるって気づかないか!

ー豚に人権を与えることを、 非道と 謗られた国家はないー

サンマグノリア共和国。

そこでは絶えず戦闘が続いていた。

大陸北部の大国、 ギアーデ帝国の周辺諸国全てに対しての宣戦布告とともに、 帝国の完全自律無人戦闘機〈レギオン〉による侵略を受けていた。

対する共和国側も無人機〈ジャガーノート〉にて対抗をしていた。

ドローン同士が 戦い殺し合う 戦場、表向きにはそう発表されていた。

戦死者のいない戦争と。

しかし、 帝国の武力の前になすすべなく、壊滅状態に追い込まれた共和国は、 ある決断を下す。

戦時特別 治安維持法の発令。

これは 共和国85区内に居住する、白系種以外の有色種を、帝国に与する敵性市民と認定し 市民権を剥奪し、 監視のもと、 85区外の強制収容所に隔離するというものだった。

85区内を追われたものは、 86ー エイティシックスー と呼ばれ、 人として扱われることなく、 家畜以下の存在として迫害、 差別され、兵役と労役を強制されていた。

そして無人機とされているジャガーノートには、86の烙印を押された少年少女が搭乗し、 多くの命が人知れずして戦場に散っていたのだ。

86は人間じゃない、 だからたとえ86が乗っていたとしても、 それは 無人機なのだ。

そんな過酷な戦場で生き抜いているものがいた。

第一線区の激戦区を生き抜き続けるスピアヘッド戦隊。

メンバーそれぞれが古参兵で、通称、号持ちと呼ばれる精鋭が集った舞台である。

スピアヘッドを率いるのはまだあどけなさが残る少年、シンである。

そしてスピアヘッドのハンドラー( 指揮管制官) となった少女、 レーナ。

彼らが顔を合わせることは決してない。

シン達は戦場で、 レーナは 共和国内の安全な場所で指示を送るだけなのだから。

当然彼らとレーナの距離が縮まることはなかった。

とあるメンバーが死ぬまでは...

それを境に、、 徐々にお互いに歩み寄っていくのだが終わることのない戦いとともに、 死にゆく多くの仲間たち。

そして迫り来る 決して逃れることのできぬスピアヘッド戦隊の運命。

それを知った時のレーナのとった行動とは... これは少年少女の悲しい戦いと別れを描いた物語。 ということでとても面白い作品である。

宗教、信仰、外見の違いによって実際に起こり得るだろうこと。

それがこの エイティシックスと呼ばれる者たちである。

人と少し違うから、肌の色が違うからなど様々な理由で、人間が過去の昔から行なってきた、同じ人間に対する非人道的行為。

そんな不合理な烙印を押されたにも関わらず日々懸命に生きる少年少女の姿。

戦いを強制され少しずつ減っていく仲間たち。

ただの戦いの物語ではなく泣けてしまう要素や考えさせる要素も多々ある。

設定的には、 よくある、実は過去に繋がりがありましたというパターンも垣間見えるが、 それが更に話の厚みをもたらしており、 納得、 頷いてしまえる。

物語はこの一冊で完結しているが、 更に続編が出ているため 続きも楽しみなシリーズだ。

またイラストも可愛らしく書かれている。

SF が読みたい2018、 ライトノベル SF 部門2位の作品。 まず間違いなく面白いので 読んで損はないだろう。