スティーヴン バクスター 著 中原尚哉 訳
19世紀、時間航行家こと”僕”は、タイムマシンを発明した。
初めての時間航行の時、西暦80万2701 年の未来で出会ったエロイ族のウィーナ。
彼女は”僕”に対して唯一愛情を示してくれた存在であった。
しかしウィーナは闇夜に、地下から現れる野蛮な種族、モーロック族に連れ去られて、殺害されてしまうのであった。
命からがら逃れて”僕”は、現代へと戻る。
1891年、ウィーナを救うために、”僕”は再びタイムマシンで未来へと向かう。
だがたどり着いた先は、別の次元の未来であった。本来目指していた未来の、15万年前へと来てしまったのである。
そこには”僕”が知っている未来の地球とは、全く異なる世界が広がっていた。
野蛮なモーロック族は、高度な知性を有しており、そこでモーロック族のネボジプフェルと出会う。
自分の知っている未来の地球とは、全く異なっており、戸惑う”僕”は元の時代へと戻るべく、隙を突いてタイムマシーンへ逃げるように乗り込んだ。
だがあろうことか、ネボジプフェルは、一緒についてきてしまったのであった。
ひょんなことから”僕”は毛嫌いしていたモーロック族と共に時間旅行をすることになってしまった。
そんな中で二人が向かったのは、”僕”がいた時代より18年前の1873年であった。
こんなにも未来が変わってしまったのは、自分が時間旅行をしてしまったからだ。
そう気付いた”僕”は、 若かりし頃の自分にタイムマシーンを やめさせようとするのだが、たどり着いた1873年も”僕”の知っている過去ではなくなっていたのだった。
”僕”にとっては憎むべき相手のモーロック族と、時間旅行をしていく中で、”僕”は次第にネボジプフェルの存在が大きなものとなって行く。
いつしか友情に近い感情を覚えていく”僕”。
遠い未来・過去を巡る中で、”僕”はタイムパラドックスではなく、多様性における平行世界が構築されることを知る。
つまりそれはもう元の自分の世界に戻れないということであった。
そして”僕”は有限から無限の境地へとたどり着く。
この作品は時間旅行を描いた壮大なスケールの物語である。