マックス ブルックス著 浜野 アキオ 翻訳
中国の僻地の村で異変が起きていた。
一人の少年が謎の疫病に感染し、死亡する。しかし死んだ後、自我を失い凶暴なゾンビとしてよみがえる現象が起きたのだ。
それはどんな殺りく兵器よりも恐ろしいものだった。
この村では感染拡大《アウトブレイク》を起こし、やがてアジアを始め、ヨーロッパ、アメリカへとアウトブレイクしていく。
世界中が生きる死者で埋め尽くされていった。
各国が対応するものの、死者の大軍を前に成す術が無かった。
アメリカ軍は敗北し、日本は国土を捨てた。
寒い土地ならゾンビは凍って活動ができないため、人々は寒冷地への移住を余儀なくされる。
だが、生き残った人類がこのまま退き、滅ぶわけにはいかない。
陸と海で場所を選ばずに襲い来る死者へと立ち向かっていく。
世界Z対戦の始まりである。
ブラッド・ピット出演の映画化作品の印象が良かったので原作を読んでみたが、これはかなり好みが分かれる作品だと思う。
一般的な小説と違って、主要キャラがいて、ストーリーが展開するのではなく、インタビュー形式での回想談となっており、様々な地域の人(年齢、性別、職業などのくくりもない)からの証言によって形成されている。
なので感情移入はもちろんの事、語る人が変わると話が全く別のものになっているので理解しにくく、ストーリーが追いにくいかもしれない。
だがそれらの人々の断片を集めて、一つの世界Z大戦という大きな物語として成り立っている構成はすごいと感じた。
映画版同様に、とにかくゾンビの恐ろしさが際立っている。
ゾンビなのに普通に走る(しかも相当早い)し、水中でも問題なく活動できるし、圧倒的な数だし、頭(脳)を破壊しない限り、活動停止しないという最凶最悪極まりない。
そんな死闘を描いたパニックスペクタクルである。