江波光則(著)
東京は怖い街だ。
そう呟くのは建築現場で日当を稼いで暮らす筧白夜。
会社の飲み会で池袋の街中にて彼は突然襲撃される。
ノックアウト強盗と呼ばれるもので不意打ちで昏倒させる手段なのだが、白夜はただものではなかった。
無明拳という拳法、通称殺人空手の使い手なのだ。
その技は体中にある経穴という急所を的確に射抜くことにより、相手を死に至らしめる事もできる技なのである。
強盗を一蹴する白夜だが、彼の前には職場の同僚で職長である長谷川黒曜が現れる。
周囲と関わらない白夜に近づく黒曜は白夜と同じ神座市という街の出身で、毎晩宝探しをしているという怪しい男だったが、白夜の過去を知っていた。 白夜は家族全員を何者かによって殺害されていたのである。
そして自分の職場には神座市出身者が多いことに気付く。
これは偶然なのだろうか...
その後、白夜はとんでもない強さの義足の老人に殺されかけたり、黒曜から仕事の依頼で風俗嬢と関係を持つが、その女性が目の前で殺害されたりと危険に巻き込まれていく。
そしてすべては神座市の派遣を巡る三家の争いであり、白夜はその渦中に引きずり込まれていた。
それが自分の家族が襲われた悲劇につながっていたのだった。
この作品はクライムサスペンスといえるだろう。
普通の人間はほぼ出てこない。
暴力、ドラッグ、セックス、犯罪に暴力団と闇の要素満載の作品だ。
作中に出てくるキャラも、一癖も二癖もあり、強い奴ばかりだ。
格闘シーンの模写も細かく、その光景が目に浮かぶ。
だが、ただダークな作品なわけではなく、ストーリーの構成や描写の上手さも際立っている。
青春ラブコメが主流の昨今のラノベにおいては異質な作品かもしれないが、個人的には好みでとても魅力ある作品だと思う。