村松 涼哉(著)
”新宿駅に爆弾を仕掛けました”という爆弾によるテロ予告。
その動画をあげたのは15歳の少年だった。
少年は予告が真実であることを示すため、自身の個人情報のすべてを明かす。
渡辺篤人と名乗ったテロリストの少年。
週刊誌の記者である安藤は、少年のことを知っていた。
彼はかつて少年犯罪被害者の会に来ていたのだ。
安藤も恋人を少年犯罪で失くしていた。
そして渡辺篤人も少年犯罪によって家族を失っていたのである。
予告通り新宿駅で爆発が起こるが、幸いなことに死傷者は出なかった。
しかし彼の凶行はこれだけに収まらなかった。
渡辺篤人は新たな爆破予告を続けていく。
警察は捜査を進めるが一向に渡辺篤人は見つからない。
そんな中で安藤も独自に少年の行方を追っていく。
容疑者である渡部は、かつて13歳の少年によるタバコの火の不始末によって火事により家族を失っており、彼は復讐を目論んでいた。
その復讐のため一人の少女へと近づいていく。
その少女は加害者家族だった。
彼が求めたのは復讐と真実であった。
渡辺篤人がテロリストとなった真実とは一体何なのか...
この作品は少年犯罪による被害者と加害者を描いた作品であり、様々な問題提起をするかのように訴える力がある作品である。
当事者でない人は、ネット社会の現代において、顔が見えなかったり匿名であることをいいことに、好き勝手言う人が多く見られるが、その言葉が恐ろしい刃になり得ることを自覚してほしい。
否定的な主張をするのであれば、もっと自分の発言に責任を持つべきだし、でなければ無責任な発言はするべきではない。
被害者はもちろんのこと加害者の家族だってある意味では被害者になってしまう。
所詮法律なんて人が作ったルールで、理不尽に思うことは少年法に限らず多々あるだろう。
残酷でときに理不尽で納得のいかないことはたくさんある。
でもそんな世の中で生きていかなければいけない。
その中で何が出来るのかそんな事を色々と考えさせられる作品であると思う。