安里 アサト (著), しらび (イラスト)
エイティシックスは人間ではない。
だから戦場で戦っているのは無人機であり、戦場での戦死者はゼロである
今日は国より追われた白系種以外の民族は人型の豚として存在しない86区へと迫害されてエイティシックスとなった。
彼らは無人機として戦場に行き、次々と死んでいく。
大人、女性、老人に至るほぼ全てが死亡し、残っているのは少年少女、年端も行かない子供たち。
その地獄の戦場に10歳を超えたばかりの少年が降り立った。
シンエイ・ノウゼン、
後にエイティシックスの死神として葬儀屋と言う名のアンダーテイカーを駆り、死んでいった仲間たちの遺志を最後まで連れて行く使命を背負う少年。
わずか10歳そこらでシンは別格だった。
レギオンの声が聞こえる異能をもとに、どの戦隊にいても、必ず彼1人だけは生き残る。
いつからか疫病神と呼ばれるようになるが、それでもシンに対して向き合うものもいた。
初めて配属された隊の女性隊長はシンに多くのことを教え、伝えた。
非情を教えた者もいた。
やがて、隊長格になり、シンを慕う者もいた。
シンのパーソナルネームを考えようとした者も…だが、その誰もが絶死の戦場であっけなく散っていった。
これはスピアヘッド戦隊長として、特別偵察に出るまでのシンの過去と成長を描いた物語である。
記念すべきすべきシリーズ第10弾は連作短編集と言える過去の物語だ。
エイティシックスの原点といえる存在しない86区。
絶死の戦場を描いた今作は、個人的に、ここ最近のシリーズの中で一番良かった。
死ぬことが運命づけられた戦場で、必死に生きる姿はシリーズを読み始めた頃の懐かしい気持ちを思い起こさせてくれた。
シンの成長していく姿と、スピアヘッド戦隊以前に出会って死んでいった者たち、ファイドとの関係は心を打つものがある。
余談だが、ファイドのイラストがとてもかわいい。
86の原点に返った今作、ファンは必読だろう。