ジョン・スコルジー (著), 内田 昌之 (翻訳)
人類が銀河に進出した未来。
地球人は大銀河連邦に加盟しており、多くのエイリアンと外交を行っていた。
そんな地球人に軍事力を持って圧力をかけてくるニドゥ族との貿易交渉の場で、地球人の外交官はおならで重大事件を引き起こしたのである。
ニドゥ族は臭いを言語化する種族で、体内に仕込んだ装置を使って地球人外交官はニドゥ族の代表を屈辱し続け、怒り狂うニドゥ族の代表は脳出血を起こして死んでしまったのだ。
この事件は両種族の関係を悪化させ、全面戦争につながりかねない問題へと発展してしまう。
しかし軍事力で劣る人類に、戦争となれば勝ち目は無い。
そこに付け入るようにしてニドゥ族はある要求を人類にする。
それは仮に彼らの儀式で必要な羊を調達するということだった。
その羊は特別でアンドロイドの夢と呼ばれる品種だった。
期限は1週間。
地球国連はこの極秘任務のために、凄腕のハッカーで元兵士、現在はエイリアン相手に悪い知らせを届ける汚れ仕事をこなしているハリス・クリークに仕事を命じる。
クリークは羊を探し始める。
そこで、とあるペットショップの店長、ロビン・ベーカーと言う女性の元を訪れる。
だが、クリークは何者かに追われ、反ニドゥ派の暗殺者に命を狙われてしまうのだった。
そしてベーカーの正体は驚くべきものだった。
羊の正体とは、地球の運命はどうなってしまうのか…
スコルジーの作品は、「老人と宇宙」シリーズを始め、実に面白い。
今作は控えめらしいが、おならによって外交問題になると言う設定はユーモアがあって、いかにもスコルジーらしい。
タイトル通り、ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」に捧げられてはいるが、この物語の内容にはあまり関係なく、純粋に冒険SFとなっている。
そしてやはりスコルジー作品、「老人と宇宙」シリーズと同様に、エイリアン種族の模写が実に緻密であるのが大きな魅力の1つだ。
目を閉じると宇宙でエイリアンが躍動する姿が浮かび上がってくる。
好きな作家の1人である。