事故死とされた児童福祉士の死は他殺なのか。

監獄に生きる君たちへ


監獄に生きる君たちへ

松村 涼哉 (著)

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松村 涼哉 (著)

事故死ではないという児童福祉士茜からの手紙。

大学受験を控えた高校3年の夏。

70年代に建てられた公営団地に住む古谷桜介はこの団地を監獄と表現する。

かつては人気があり、活気があったこの団地も今では老朽化が進み、住人の数も年々減っていた。

ここに残っている人間の楽しみは噂話だけ。

7年前に起きた事件により好奇に満ちた視線を送られる日々に桜介はうんざりしていた。

だがそれもあと少し、大学に進学して、ここから脱出すると彼は決めていた。

そんな桜介のもとに1通の手紙が届く。差出人の名はありえない者であった。

その人はもうこの世にいないのだ。

一体誰の仕業か…

その手紙には”自分の秘密を知っている。施設にて7年前の潔白を証明せよ。”と言う内容であった。

悩む桜介だったが、彼は指定された施設へと向かう。

そこはかつて訪れたことがある場所であり、その施設には欧介を含む6人の少年少女が集まっていた。

そして1枚の紙にプリントされた文字“私を殺した犯人を暴け。

真鶴茜“と書かれていた。

建物は外から施錠され、出ることはできない。

監禁された6人にはつながりがあったのだ。

6人はかつて児童福祉士だった真鶴茜に助けられたことがあり、7年前ともに夏の旅行でこの施設を訪れていたのだ。

その日の夜、茜は崖から転落し、事故死として処理されていたのである。

あれは事故死ではない。

殺した犯人がこの中にいる…

6人は脱出するために、あの日の出来事を証言していく。

果たしてその真実とは…

今作も衝撃的な内容と言って良いだろう。

扱っている内容は家庭環境に問題を抱え、虐待を受けていた子供たちと、その子供を守る児童福祉司であるが、まさに今の日本が抱える問題訴える作品である。

昨今でも虐待による凄惨な事件が多発している中で、それらの問題や対応する激務、苦悩といったものを、描いており、多くのことを考えさせられるだろう。

こうした社会問題を提起するような作品を描く作者は凄いと思う。

このような作品に多くの人が触れて、問題が少しsでも良い方向に向かって、いたたまれない悲しい事件が少しでもなくなればと思わずにいられない。

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