野崎 まど (著)
何も決められない優柔不断な高校生堅書直実。
まさに堅実を絵に描いた人生を送ってきた彼は高校入学をきっかけに変わりたいと思っていた。
本が好きな直美はクラスの役員決めで、やはり自分の意思とは別に図書委員になってしまう。
だがそれがもとで一人の少女と出会う。
彼女の名は一行瑠璃。
その出会いは運命だった。
そんな直美の前にある日、謎の男が現れて直美へ告げる。
お前は記録世界の住人であると。
その男は2037年の現実世界からアクセスしている10年後の堅書直実だったのだ。
直美の世界は量子記憶装置アルタラに記録された過去の世界だったのである。
未来の自分が過去へ来た目的、それは彼女を救うためだった。
過去の世界で3か月後、直美は瑠璃と付き合うことになるのだが、彼女は事故死する運命だった。
恋人を救うため2人の直美は協力し、運命を変えようとする。
だが、未来を変えるということは当然ながら、大きなリスクが伴う事だった。
更に未来の現実世界から来た直美の本当の目的は別のものであったのだ...
京都を舞台にした青春SFである。
まず実際にある都市の京都が舞台なので、とてもストーリーをイメージしやすい。
SFというカテゴリーであろうが、難しい言葉や専門的な用語も全然出てこないので、読みやすい。
主人公が本が好きで、中でもSFが一番好きで作中に出てくる有名作家の名前や序盤に連発する”直美は今日本屋に行こうと思った”という一文に、主人公の設定がとてもよくできており、馴染みやすい。
優柔不断な直美が恋人のために成長していく姿と、その後の物語の展開も素晴らしく、映画化もうなづける作品だ。